無水試験が終わったあと、有水試験で何をするのかがはっきりしない。工程表に並ぶ試験名は分かっても、それぞれが何を確かめているのかがつながらない。
有水試験は、充水から始まって効率試験まで続きます。
担当する試験が全体のどこにあるかが見えると、記録すべき値も、比べるべき無水試験のデータも決まってきます。
有水試験とは何か
有水試験は、水を通し、実際に水車を回した状態で行う試験です。水を通さずに行う無水試験と対になる言葉で、水があるかないかで分けています。
目的は、無水段階で確認した内容が、水と負荷が加わった本番の条件でも成り立つかを確かめることです。
ここが有水試験の性格をよく表しています。新しい基準をこの段階で作るのではありません。無水試験で記録した値と突き合わせ、ずれがないかを見ていく作業です。
なぜ水を通してから確認する必要があるのか
水圧、回転、負荷は、無水の状態では作れません。
弁が実際の水圧のもとで設計どおりに動くか、軸受の温度が運転を続けても落ち着くか、負荷を切った瞬間に回転速度がどこまで上がるか。これらは水を通し、機械を回してみなければ分かりません。
一方で、無水の段階で潰せる間違いを残したまま水を入れると、水を抜くところからやり直しになります。工程にも費用にも跳ね返ります。
だから順序があります。単純な条件のうちに単純な間違いを潰しておき、そのうえで水と負荷を加える。有水試験は、その最後の段階にあたります。
有水試験の流れ
有水試験は、おおむね次の順序で進みます。
- 充水と漏水確認
- 入口弁・各弁の動作確認
- ゴロ廻し(初回転)
- メタルならし試験
- GOV調整(並列前)
- AVR調整(並列前)
- 並列投入試験
- AVR調整(並列後)
- 自動起動停止試験
- 故障停止試験
- 負荷遮断試験
- 負荷試験
- 効率試験

水を入れるところから始まり、機械を回し、系統につなぎ、止める仕組みを確かめ、負荷をかけて確認し、最後に性能を測る。確認する範囲が少しずつ広がっていく構造になっています。
なお、順序や項目の呼び方は設備や工事によって異なります。ここでは私が担当した設備を例に説明します。
有水試験の主な項目
① 充水と漏水確認
まず鉄管に充水し、漏水がないかを確認します。
続いてバイパス弁を開けてケーシングを充水し、ここでも漏水を確認します。あわせて、各種の圧力計や圧力センサが正しく動作するかを確認します。
水を入れて初めて圧力がかかるため、圧力計と圧力センサが実際に動くかを確かめられるのは、この段階が最初の機会になります。
② 入口弁・各弁の動作確認
充水が終わったら、入口弁の動作確認を行います。
各弁の動作確認では、動作圧力や動作電圧、電流が、無水試験で記録したデータと相違ないかを確認します。
値がずれていた場合、水圧がかかったことによる影響なのか、それとも無水段階の記録そのものに問題があったのかを切り分けることになります。比較する相手があるからこそ、判断ができます。
入口弁そのものの仕組みと動作試験については、水車入口弁の動作試験にまとめています。
③ ゴロ廻し(初回転)
水車を初めて回す段階です。
発電機は無励磁のままにします。ガイドベーン(ペルトン水車の場合はニードル)を手動で徐々に開け、少し回ったところですぐに閉じます。
この間に確認するのは、軸振れ、異音、振動、軸受温度、ガイドベーンの開度、そして最高回転数です。
回転数はデジタル回転計を仮設して測り、配電盤に表示される数値とずれがないかを確認します。回転速度の検出については、スピードセンサー(SSG)の試験方法で詳しく扱っています。
ブレーキがある設備では、動作する回転数を事前に確認しておき、この段階で手動で動作させます。
④ メタルならし試験
初回転のあとに行うのが、メタルならし試験です。軸受メタルをなじませることを目的とした試験です。
回転数を1/4、2/4、3/4、4/4と段階的に上げていきます。各段階で軸受温度が落ち着いたことを確認してから、次の回転数に上げます。
温度が落ち着くのを待ちながら進めるため、1日がかりの試験になります。朝から始めて夕方に終わるイメージです。かかる時間は機械によって変わります。
この間、軸受温度をグラフにして推移を記録します。あわせて軸振れと振動も確認します。
判定は温度の上昇率で行います。1時間あたりの上昇が2K以下に落ち着けば良好です。逆に温度が急激に上がり始めた場合は、すぐに停止して分解確認に移ります。
軸受は、いったん焼き付かせてしまえば復旧に時間も費用もかかります。温度が落ち着くまで待つという地味な作業ですが、ここを急ぐ理由はありません。
⑤ GOV調整(並列前)
系統につなぐ前に、GOV(調速機)の調整を行います。
行うのは、インディシャル応答試験、速度調整範囲測定、自動始動試験です。
インディシャル応答試験は、目標値をステップ状に変化させ、そのときの応答を見る試験です。行き過ぎ量や整定するまでの時間から、PIDの設定値を調整します。
速度調整範囲測定では、回転速度をどこまで上下できるかを確認します。自動始動試験では、起動指令から定格回転に達するまでの動きを見ます。
系統につないでしまうと、回転速度は系統の周波数に引っ張られます。調速機そのものの働きを見られるのは、並列する前の段階です。
⑥ AVR調整(並列前・並列後)
AVR(自動電圧調整器)の調整は、並列の前と後の2回に分かれます。
並列前は、GOVと同じくインディシャル応答試験を行い、PIDの設定値を調整します。あわせて電圧確立試験と電圧調整範囲測定を行い、無負荷の状態で電圧が整定値どおりに立ち上がるか、どこまで調整できるかを確認します。
並列投入では母線電圧と発電機電圧を合わせる必要があるため、この調整が済んでいることが前提になります。
並列後は、系統につながった状態で無効電力調整試験などを行います。系統に並列すると電圧は系統に支えられる形になり、AVRの働きは発電機が受け持つ無効電力の側に現れます。同じAVRでも、並列の前と後では見ている現象が変わります。
並列後の調整項目は設備によって異なるため、ここでは詳細には触れません。
⑦ 並列投入試験
発電機を系統につなぐ試験です。
まず高圧検相を行い、同期検定器が正常であることを確認します。続いて低圧検相で、VT二次側の回路が合っているかを確かめます。
次に、遮断器を試験位置にしたまま空並列の試験を行います。メモリハイコーダで母線電圧と発電機電圧のビート電圧を測定し、自動同期装置の遮断器投入タイミングを調整します。
調整が完了したら、発電機遮断器を接続位置にして実並列試験を行います。
高圧検相から低圧検相、空並列、実並列までの具体的な手順と、投入タイミングの合わせ方は発電機の並列試験|検相・空並列・実並列の手順と同期投入タイミングの調整にまとめています。
なお、自動同期装置の電圧・周波数・位相についての動作確認は、無水試験の段階で済ませておきます。有水段階で合わせるのは、投入のタイミングです。
遮断器の試験位置と運転位置の使い分けについては、保護連動試験とはでも触れています。
⑧ 自動起動停止試験
通常の起動と停止が、シーケンスどおりに進むかを確認する試験です。
あわせて、各機器の動作時間を測定して記録します。これは合否を判定するためだけの測定ではありません。この値が初期値となり、以後の定期点検で比較する基準になります。
新設時にしか取れないデータなので、確実に残しておきたい項目です。
⑨ 故障停止試験
86-1、86-2などの停止区分を、すべて実際に動作させて確認します。
無水試験の段階でも停止区分は確認しますが、有水段階では、実際に水車が回っている状態から止めるところまでを見ます。
停止区分の考え方については、水車発電機の停止区分にまとめています。
⑩ 負荷遮断試験
停止区分の確認が終わり、異常が起きたときに確実に止められることを確かめたうえで、負荷遮断試験に進みます。
負荷遮断試験は、有水試験のなかでも機械にもっとも負担のかかる試験です。だからこそ、止める仕組みの確認を先に済ませておきます。
出力を1/4、2/4、3/4、4/4と段階的に上げながら、異常がないかを確認していきます。
各段階で、測定値がメーカーの保証値に入っているかを確認します。保証値には次のようなものがあります。
- 電圧上昇率
- 鉄管最大水圧
- 回転上昇率
- ガイドベーンやデフレクタのデッドタイム
負荷を切った瞬間、水車には行き場を失ったエネルギーが残ります。回転速度がどこまで上がるか、鉄管の水圧がどこまで上がるかは、機械の強度に直結します。保証値に収まっているかどうかは、設備を安全に使い続けられるかの確認そのものです。
⑪ 負荷試験
出力を1/4、2/4、3/4、4/4と段階的に上げていき、各段階で数値を確認します。
中心になるのは固定子温度の推移です。メタルならし試験と同じように、軸振れや軸振動もあわせて確認します。
測定する項目は多岐にわたります。出力、電流、電圧、力率、各部の温度、回転数、そして補機関係の数値まで記録していきます。
温度が安定するまで待ちながら進めるため、この試験も1日がかりになります。朝から始めて夕方に終わるイメージです。
ここで気づくのは、メタルならし試験と負荷試験がよく似た形をしていることです。
| メタルならし試験 | 負荷試験 | |
|---|---|---|
| 段階的に上げるもの | 回転数 | 出力 |
| 中心に見る温度 | 軸受温度 | 固定子温度 |
| 所要時間 | 1日がかり | 1日がかり |
| 待つ理由 | 温度が落ち着くまで | 温度が安定するまで |
回すこと自体に機械が耐えられるかを確かめるのがメタルならし試験、発電すること自体に耐えられるかを確かめるのが負荷試験です。どちらも段階的に条件を上げ、温度が落ち着くのを待つという同じ進め方をとります。
判定に用いる規定値は設備によって定められています。
⑫ 効率試験
有水試験の最後に行うのが効率試験です。対象は水車効率で、水が持っているエネルギーのうち、どれだけを水車が取り出せているかを確かめます。
測定するのは次の項目です。
- 流量(超音波流量計を使用)
- 水温
- 水槽水位
- 鉄管水圧
- 放水路水位
- 発電機出力
水槽水位と放水路水位を測るのは、落差を求めるためです。水温を測るのは、超音波流量計が音の伝わる速さをもとに流量を出しており、その速さが水温によって変わるためです。効率を正しく出すには、流量と落差の両方を正確に押さえる必要があります。
判定は、メーカーの保証値と比較して行います。保証した効率が実際に出ているかを、引き渡しの前に確認する試験です。
実施は第三者機関に依頼し、私はそれに立ち会うことが多いです。効率は保証値の達成を判断する数値であり、専用の計測器と測定の技術も必要になるため、中立の立場で測ることに意味があります。
無水試験のデータが基準になる
ここまで見てきたとおり、有水試験の多くの項目は、無水試験で記録した値との比較で成り立っています。

無水試験の記録が残っていなければ、有水試験で異常が出たときに比べる相手がありません。有水試験の質は、無水試験の記録の質に支えられています。
有水試験で実際にあった不具合
実際に経験した例を2つ挙げます。
1つ目は、充水したときに配管から漏水があったことです。水を入れて初めて分かるもので、有水試験の役割そのものと言えます。
2つ目は、鉄管水圧センサが復帰しなかったことです。調べた結果、配線の接続が違っていました。
圧力がかかって初めて動作する機器は、無水の段階では動作を確認しにくく、配線の間違いが残りやすいところです。だからこそ、充水の段階で圧力計と圧力センサの動作を確認する項目が入っています。
まとめ
有水試験は、水を通し、水車を回した状態で行う最終確認です。
充水から始まり、弁の動作、初回転、メタルならし、GOVとAVRの調整、系統への並列、停止区分の確認、負荷遮断、負荷試験と続き、最後に効率試験で締めくくります。確認する範囲が少しずつ広がっていく構造になっています。
最後の効率試験だけは、性格が少し違います。ここまでの試験が「正しく動くか」「安全に止まるか」を確かめてきたのに対し、効率試験は「約束した性能が出ているか」を確かめる試験です。設備が使える状態にあることを確認したうえで、その性能を評価する。この順序で並んでいます。
そして、その多くは無水試験で記録した値との比較で成り立っています。新しい基準をこの段階で作るのではなく、無水段階で確かめたことが本番の条件でも成り立つかを見ていく。これが有水試験の性格です。
工程全体の位置づけは無水試験とはにまとめています。あわせて読んでいただくと、水力発電所の試験がどのような順序で組み立てられているかが見えてくるはずです。
負荷遮断試験については、段階の踏み方や記録の取り方を負荷遮断試験とはで詳しく解説しています。
故障停止試験については、模擬する故障や測定する時間、記録から見つかった不具合を故障停止試験とはで詳しく解説しています。


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