保護連動試験とは|手順と86トリップ回路、現場で見つかる不具合

保護継電器から遮断器までのトリップ経路と、試験の守備範囲を示した図。経路は保護継電器(OCR・DGRなど)、出力接点と制御回路の配線、86ロックアウト継電器(86-1非常停止/86-2急停止)、トリップコイル、遮断器開放の順につながる。特性試験の守備範囲は保護継電器までにとどまるのに対し、連動試験の守備範囲は出力接点から遮断器の開放までを覆う。経路の途中では断線、端子の緩み、接点不良が起こりうることを赤い印で示している。 保護継電器の試験

特性試験の数値は出せるようになった。けれど連動試験になると、何を見ている試験なのかが掴めない。

連動試験で見ているのは、遮断器が動くかどうかではありません。継電器の接点から遮断器までの経路がつながっていて、保護として成立するかどうかです。

後半では、無水試験で警報表示試験を180ケース流したときに見つかった、表示器の故障や自己保持回路の欠落といった不具合も紹介します。

保護連動試験とは何か

保護連動試験は、継電器が動作してから遮断器が実際に開放するまでの経路が成立するかを、通して確認する試験です。現場ではシーケンス試験とも呼びます。

確認する範囲は、継電器の出力接点から先です。継電器の接点、制御回路の配線、補助リレー、ロックアウト継電器、トリップコイル、そして遮断器。この一連のつながりを、実際に信号を流して確かめます。遮断器単体の動作時間を確かめる試験は、遮断器(VCB)の開閉時間測定にまとめています。

保護継電器試験は大きく特性試験・連動試験・付帯確認の3つに分かれます。その全体像は保護継電器試験の基礎で整理しています。この記事はそのうちの連動試験を掘り下げるものです。

なぜ特性試験だけでは足りないのか

特性試験は、継電器が整定値どおりに動作するかを見る試験です。最小動作値も動作時間も規定内。成績書は良好。それでも遮断できないことがあります。

理由は単純で、継電器が動いた先の経路が切れていれば、遮断器までは信号が届かないからです。制御線の断線、端子の緩み、誤配線、補助リレーの接点不良、トリップ電源の喪失。どれも継電器そのものとは無関係に起こります。

つまり連動試験で見つかるのは、「継電器は正常、でも設備としては保護されていない」という状態です。

この考え方は水力の無水総合試験とまったく同じです。機器が1台ずつ合格していても、つないだ状態で合格するとは限らない。詳しくは無水試験とはで扱っています。

保護継電器から遮断器までのトリップ経路と、試験の守備範囲を示した図。経路は保護継電器(OCR・DGRなど)、出力接点と制御回路の配線、86ロックアウト継電器(86-1非常停止/86-2急停止)、トリップコイル、遮断器開放の順につながる。特性試験の守備範囲は保護継電器までにとどまるのに対し、連動試験の守備範囲は出力接点から遮断器の開放までを覆う。経路の途中では断線、端子の緩み、接点不良が起こりうることを赤い印で示している。

トリップ回路と86の関係

水力発電所のトリップ回路には、ロックアウト継電器(86)が入ります。各保護継電器が検出した故障は、いったん86に集められ、そこから先が共通のトリップ回路になります。

86は故障の区分ごとに分かれています。

区分継電器対象
非常停止86-1発電機の短絡、地絡など電気的故障
急停止86-2過速度、軸受温度異常など機械的故障

つまり連動試験では、「その故障が正しい86に入るか」と「86から先が遮断器まで届くか」の2段階を見ることになります。停止区分の考え方は水車発電機の停止区分で詳しく整理しています。

86はいったん動作すると、手動で復帰させるまで状態を保持します。誤って再起動させないための仕組みなので、試験でも復帰操作までを一連の流れとして確認します。

試験を始める前に、どの故障がどの86に割り付けられているかを整定表で確認しておきます。

継電器を強制動作させる方法

連動試験では、実際に故障が起きていない状態で継電器を動作させる必要があります。この強制動作のさせ方が、リレーの種類によって違います。

  • ヒューズ付きクリップで接点をメークする:出力接点の端子間を短絡し、動作した状態を作ります
  • 円板形リレーは円板を直接回す:機械的に円板を回して接点を閉じさせます。誘導形OCRなどが該当します
  • 信号線をリフトする:b接点で構成された回路では、線を外して開放状態を作ります
  • デジタル継電器は試験モードを使う:機種によっては、パネル操作で出力接点を強制的に動作させる試験モードが備わっています。配線に触らずに条件を作れるため、使えるならこれが最も確実です
連動試験で継電器を強制動作させる4つの方法を並べた図。ヒューズ付きクリップで出力接点の端子間を短絡してメークする方法、円板形継電器の円板を直接回して接点を閉じる方法、信号線を端子から外してタグを付け開放状態を作るリフト、そしてデジタル継電器のパネル操作で出力接点を強制動作させる試験モードの4つ。いずれの場合も、外した線・ジャンパー・試験モードは必ず元へ戻す必要がある。

どの方法を使うかは、その継電器の構造と回路の組み方で決まります。同じ現場でも継電器ごとにやり方が変わるので、展開接続図と機器の構造を見て判断してください。

クリップは必ずヒューズ付きのものを使います。当てる場所を誤ったときに、被害をヒューズ1本で止められるからです。

試験モードを使った場合は、通常モードへ戻したことを必ず確認してください。試験モードのまま設備を運転させれば、保護が働かない状態を残すことになります。

外した線やジャンパーは、その場で記録します。保護に関わる線を戻し忘れれば、保護が効かないまま設備を運転させることになります。

具体的な継電器の特性試験については、誘導形OCR、DGR、漏電遮断器(ELCB)の記事で扱っています。

継電器の動かし方は、機種に合わせて変えます。ひとつのやり方で全部を動かそうとすると、接点を傷めることがあります。

遮断器はどう動かすか

連動試験では、遮断器を試験位置にして動作させます。主回路から切り離された状態なので、実際に開閉させても系統には影響しません。

ただし、試験位置でも遮断器を投入するには所定の試験条件を整える必要があります。切指令が出たままでは投入できないため、そのロックなどを行ってから投入します。

運転位置のまま投入したら何が起こるか

ここは事故に直結するので、はっきり書いておきます。遮断器の位置を確認しないまま投入操作を行うと、重大な災害になります。

運転位置のまま投入すれば、主回路が充電されます。停電させたはずの区間に電気が流れるということです。その先で作業している人がいれば感電します。安全のために短絡接地器具を取り付けてあれば、投入した瞬間に短絡事故です。大きなアークが発生し、機器も人も無事では済みません。

発電機側であれば、同期を取らないまま系統につながる可能性もあります。回転している機械に電気的な衝撃が加わり、軸や巻線を傷めます。

引出形遮断器の試験位置と運転位置を比較した断面図。上段の試験位置では、遮断器が手前に引き出され、主回路の断路接触子が可動側と固定側で離れているため母線側もケーブル側も無電圧。制御回路コネクタだけが接続されており、安全に試験ができる状態。下段の運転位置では、遮断器が奥まで収納されて断路接触子が接触し、母線側とケーブル側の主回路が充電されている。この状態で投入すると、停電させたはずの区間が充電されて作業者が感電する、短絡接地器具があれば投入した瞬間に短絡事故になる、発電機側なら非同期投入となり軸や巻線を傷める、という危険がある。

だからこそ、操作の前に必ず遮断器の位置を確認します。それも盤面の表示だけで済ませず、現物を目視してください。後述しますが、表示器が故障していた例もあります。表示は必ずしも本当の状態を示しているとは限りません。

86以降は共通なので省略できる

ここは工程を左右する実務のポイントです。

86から先のトリップ回路は、どの故障でも共通です。そのため、一度「86が動作すれば遮断器が開放する」ことを確認できれば、それ以降のケースでは遮断器まで動かす必要がありません。86が正しく動作したところまでを確認すれば足ります。

複数の故障が86に集約され、その先が共通のトリップ回路になることを示した図。左側は故障ごとに異なる領域で、電気的故障の発電機の短絡(OCR)と地絡(DGR)は86-1(非常停止)へ、機械的故障の過速度と軸受温度異常は86-2(急停止)へ入る。86-1と86-2からの線は1本に合流し、右側の共通のトリップ回路へつながる。共通回路は86補助接点(a接点)、トリップリレー、トリップコイルを経て遮断器のトリップ(開放)に至る。左は毎回確認が必要だが、86から先の共通部分は一度確認すればよい。

ケース数が多い現場では、この判断が試験時間を大きく左右します。すべてのケースで遮断器を投入・開放していては、日程が持ちません。

なお、動作時間の実測は行わないことが多い項目です。連動試験の目的は経路が成立するかの確認であり、時間特性は特性試験の側で見ているためです。

全ケースで遮断器を動かす必要があるかは、事前に確認しておきます。省略できる範囲を決めておかないと、工程を圧迫します。

連動試験でしか見つからない不具合

これまでに連動試験で見つけた不具合を挙げます。どれも特性試験や図面のレビューでは出てこないものです。

表示器が動作しなかった。ベルは鳴るのに、盤面の表示器が出ませんでした。表示器そのものの故障です。音だけ聞いていれば正常に見えるので、表示まで目視で確認していなければ見逃していました。確認方法として、もう一度リレーを動作させたときに、表示器のコイルに電圧が印加されていれば表示器の故障で間違いありません。

自己保持回路がなく、復帰してしまった。動作はするものの、条件が外れると状態が戻ってしまう。保持されなければ、運転員が気づく前に表示が消えます。回路の組み方に起因する不具合で、実際に動かして初めて分かるものです。

停止区分が違っていた。本来は急停止に割り付けられるべき故障が、警報の扱いになっていました。表示は正常に出るので、信号が届くかどうかだけを見ていたら素通りしていました。この件の詳細は水車発電機の停止区分に書いています。

接点抵抗が大きく動作しなかった。機械式リレーで、接点の汚れによって抵抗が高くなっていた例です。この点は保護継電器試験の基礎でも触れています。

共通しているのは、書類の上では何も間違っていないことです。設計は正しく、継電器の特性も規定内。実際に信号を流して初めて表に出ます。連動試験を省けない理由はここにあります。

合否は、音や1つの表示だけで判断しません。表示器と保持の状態まで確認します。

安全上の注意

  • 停電範囲を確認し、関係者と需要家へ周知する
  • 試験端子・切離し端子を扱う順序を守る。誤ると試験中の信号が実際の遮断器へ伝わり、誤トリップになる
  • 遮断器の位置(運転位置か試験位置か)を、作業前に必ず確認する
  • 制御電源が生きているかを確認する
  • 外した線、ジャンパー、切離し端子をチェックリストで復旧する

復旧は記憶に頼らず、外した順に書き出して戻すたびに消していく方式が確実です。ケース数が多いほど、丁寧さより仕組みで防ぐことを優先してください。

試験が終わったら、復旧したつもりで離れず、一つずつ確認してから現場を出ます。

なお、保護連動試験は「継電器から遮断器まで」の経路を見る試験です。発電機の起動から停止まで、機械全体のシーケンスを通しで確かめる試験は別にあり、無水総合試験とは|起動から停止までのシーケンスを模擬信号で確かめる手順にまとめています。

まとめ

保護連動試験(シーケンス試験)は、継電器が動くかではなく、保護が成立するかを確かめる試験です。

  • 確認する範囲は、継電器の出力接点から遮断器まで
  • 水力発電所では86を経由し、非常停止(86-1)と急停止(86-2)に分かれる
  • 強制動作のさせ方は継電器ごとに違う。クリップ、円板の直接操作、線のリフト、デジタル継電器の試験モード
  • 遮断器は試験位置で動作させる。86以降は共通回路なので、確認後は86の動作までで足りる
  • この試験でしか見つからない不具合がある。表示器の故障、自己保持の欠落、停止区分の誤り、接点抵抗

特性試験の数値が出せることと、保護が働くことは別です。経路を通して確かめる意味を押さえておいてください。

関連記事:保護継電器試験の基礎/水車発電機の停止区分/無水試験とは

連動試験の前段として、CT・VTが正しく取り付けられていることも確認しておきます。その手順はCT・VTの試験方法で解説しています。

無水で確認した連動が、水を入れても同じように働くか。実際の停止時間まで含めて確かめる試験については故障停止試験とはで解説しています。

電気ライオン

水力発電所で、電気設備の保守と現地試験を担当しています。経験は10年ほど。
継電器試験、無水・有水試験、測定器の使い方など、自分の手でやってきたことだけを書いています。
電験三種、第一種電気工事士、1級電気工事施工管理技士、消防設備士甲種第4類。

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