漏電遮断器の点検で、テストボタンを押して動いたから良し、としていないでしょうか。
テストボタンで確かめられるのは、引き外しの機構が動くことまでです。点検では、感度電流と動作時間まで測ります。
試験器の使い方は、普段使っている機種ごとに載せておきます。
漏電遮断器は何を検出しているのか
漏電遮断器の内部にはZCT(零相変流器)という部品が入っています。ZCTは、電源から負荷へ行く電流と、負荷から戻ってくる電流をまとめて通しています。正常な状態なら行きと帰りは同じ大きさなので、差はゼロです。どこかで地絡が起きて電流が大地へ逃げると、行きと帰りに差が生まれ、ZCTがこれを検出します。

MCCB(配線用遮断器)と混同しがちですが、役割は別です。MCCBは過負荷や短絡といった過電流から回路を守ります。ELCBが守るのは地絡です。両者は互いに代替できません。
定格感度電流は、ELCBが動作すべき漏れ電流の大きさを表します。人体の感電防止を目的とする回路と、漏電火災の防止を目的とする回路とでは、選ぶ定格感度電流が変わります。目的を取り違えると、必要な保護が得られません。
MCCBが入っていても、地絡まで守られているとは限りません。
試験の種類と判定基準を先に押さえる
テストボタンは、機器の内部で疑似的に漏れ電流を作り、トリップ機構が動くかどうかを見るだけの機能です。何mAで動いたのか、何秒で動いたのかは一切測っていません。つまり、機構が生きていることの確認であって、性能の点検にはなりません。

実際の点検では、次の3項目を測ります。
- 定格感度電流試験:規定の範囲内で動作するか
- 定格不動作電流試験:定格感度電流の50%の電流で動作しないこと
- 動作時間試験:規定の時間内に遮断するか
定格不動作電流試験は見落とされがちですが、これがないと「感度が良すぎて不要動作する機器」を見逃します。動作すればよい、という試験ではありません。判定値は、社内標準の帳票にある基準値と、対象機器のメーカー仕様書の両方で確認してください。
判定の目安(感度電流と動作時間の区分)
漏電遮断器は、定格感度電流と動作時間によって区分されています。代表的な組み合わせは次のとおりです。
| 区分 | 定格感度電流の例 | 動作時間 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 高感度・高速形 | 15mA、30mA | 0.1秒以内 | 感電の防止 |
| 中感度・高速形 | 100mA、100/200/500mA切替 | 0.1秒以内 | 漏電火災の防止、主回路の保護 |
動作時間による区分では、0.1秒以下を高速形、0.1秒を超え2秒以内を時延形と呼びます。時延形は、下位の遮断器を先に動作させたい場合に使います。
感電の防止を目的とする回路では、感度電流30mA以下・動作時間0.1秒以内が求められます。定格感度電流の選び方が目的によって変わるというのは、この区分のことです。
ただし、これは一般的な区分です。実際の合否判定は、社内標準の帳票にある基準値と、対象機器のメーカー仕様書で確認してください。
テストボタンについて、実体験から一点。押しても動作しないため長押しを続けたところ、内部回路を焼損させたことがあります。テストボタンは規定の押し方で短く押すものです。反応がないときに押し続けても復活はしません。押下方法はメーカーの指示に従ってください。
テストボタンが効いただけでは、点検済みとは記録しません。
試験器の使い方①:低圧用の漏電遮断器テスタ
低圧のELCB試験には、専用のテスタを使います。ここでは共立電気計器のKEW 5410を例にします。
レンジの読み方を覚えると、操作は一気に分かりやすくなります。×1/2レンジは定格感度電流の50%を流すもので、定格不動作電流試験に使います。×1と×5レンジは動作時間の測定に使います。定格の1倍と5倍を流し、遮断までの時間を読み取ります。感度電流測定の機能では、試験電流を自動で増やしながら、実際にトリップした値を表示します。
結線の基本は次のとおりです。
- 測定コードを、試験対象ELCBの負荷側と接地極(PE)につなぐ
- 試験電流の帰路が接地を通って確保されることを確認する
- レンジを選び、試験を実行する
接触電圧自動検出機能は、接地が不良な状態で試験電流を流すと露出部に電圧が現れる、という危険を検知するためのものです。安全装置なので無効にしないでください。
KEW 5410は常用しています。低圧側はこれ一台で足ります。
試験器の接地側は、中性線ではなく接地極につなぎます。中性線につなぐと、正しい値が出ません。
試験器の使い方②:ムサシインテック LB-6
LB-6は、GR(高圧地絡過電流継電器・無方向)、ELB(漏電遮断器)、LGR(漏電火災警報器)、ELR(漏電リレー)を試験できる継電器試験器です。ELB単体/ELB活線/GR単体/GR活線の4パターンに対応します。
覚えておきたい仕様は3つです。トリップ検出は無電圧接点・有電圧接点の両方に対応します。出力電流レンジはAC 0〜60/120/600/1200mAから選びます。そしてGR試験用の補助電源としてAC100Vを内蔵しています。高圧の継電器は動作に制御電源を必要とするため、この内蔵電源があると別途電源を用意せずに済みます。
活線試験
活線試験は、系統を生かしたまま実施します。停電させずに済むため、稼働中の設備では現実的な選択肢になります。対応電圧はELB活線で100/200/400Vです。GR活線試験では、内蔵の補助電源から継電器に電源を与えながら試験電流を印加します。
一方で、実際に遮断器が動作すれば当然停電します。「停電させずに試験できる」のではなく「停電させずに準備できる」と理解してください。動作させる以上、停電範囲の想定は単体試験より重要になります。
実務では活線試験の割合が高くなります。停電させられない設備が多いためです。活線で行う分、事前の接点確認と停電範囲の想定は、より慎重にしています。
単体試験
単体試験は、継電器を回路から切り離して行います。対応電圧は100/200Vで、別売オプションを併用すると400Vに対応します。系統から切り離すぶん周囲の影響を受けないため、活線試験で値がばらついたときの切り分けに有効です。活線で異常値が出たら、単体に落として再測定すると、原因が継電器側か系統側かを判別できます。
手順は活線・単体で共通です。
- 試験切換スイッチで対象と試験種別を選ぶ
- 専用コードを結線する
- 接点確認ブザーで結線と接点の状態を事前チェックする
- 出力電流レンジを選び、出力電流を設定する
- 試験電流を印加する
- トリップ検出を確認し、動作時間を読み取る
出力電流レンジは、対象の整定値に対して余裕のある最小のレンジを選びます。大きいレンジのままだと、目盛りが粗く、細かい値を追い込めません。
接点確認ブザーは省略しがちですが、結線ミスに気づける最後の砦です。特に対象の接点が無電圧か有電圧か分からないときは、印加前に必ず確認してください。
出力電流レンジは、小さめから始めます。大きいままだと、トリップ値を細かく追い込めません。
漏電リレー(ELR)の試験方法
漏電リレーは、漏電遮断器と似た働きをしますが、別の機器です。
いちばんの違いは、ELR自体には遮断する機能がないことです。漏電を検出したら接点を出し、別の遮断器を動作させます。大容量の回路で使われることが多い印象です。
もう一つの違いは、ZCTが別体になっていることです。ELCBはZCTを内部に持っていますが、ELRはZCTとリレーが分かれています。この違いが、そのまま試験配線の違いになります。
試験配線と制御電源
ELRの試験では、ZCTに試験配線を貫通させて電流を流します。ELCBのように本体へ試験器をつなぐのではなく、ZCTの一次側に模擬の漏れ電流を作る形です。
制御電源は既設のものを投入して使用します。ELRは動作に電源を必要とするため、ここが確保できていないと試験が始まりません。
確認する項目
- 動作電流
- 動作時間
- 警報表示
- ブレーカのトリップ確認
ELCBの試験が機器単体で完結するのに対し、ELRの試験は「リレーが動いた先」まで見ることになります。警報が正しく表示されるか、狙った遮断器が実際にトリップするか。ここまで確認して初めて、保護が成立していると言えます。
この考え方は継電器全般に共通します。継電器から遮断器までを通して確認する試験については、保護連動試験とはにまとめています。
現場でのつまずきと記録の残し方
動作しない、値がばらつくときは、まず外側を疑います。接地抵抗が高い、試験電流の帰路が確保できていない、負荷側に別の漏電がある、といった原因が典型です。特に帰路は見落としやすく、結線は合っているのに電流が流れていない、ということが起こります。
機器側の原因もあります。長く動作していない遮断器で、トリップ機構が固着していて動かなかったことがありました。結線と接地を確認しても値が出ないときは、機器そのものを疑います。
短時間に何度も動作させると特性が変化するため、連続試験は避けてください。また、上位と下位のELCBを同時に飛ばさないよう、地絡保護協調(上位の動作時間を下位より遅くする考え方)を意識します。上位が先に動作すると、想定より広い範囲を停電させます。試験前には停電範囲を必ず確認し、関係者へ連絡してください。
記録はExcelの帳票に残しています。判定は社内標準の基準値に照らし、外れた場合は持ち帰らず、その場で上長へ報告する流れにしています。判断を現場で抱え込まないことが大事です。
試験の前には、停電範囲を必ず確認しておきます。省くと、想定外の負荷を止めてしまうことがあります。
ほかの測定器をどう使い分けているかは、現場で使う電気計測器の使い分けにまとめています。
まとめ
漏電遮断器(ELCB)は、ZCTで行きと帰りの電流の差を見て地絡を検出しています。ただテストボタンは機構が動くかを見るだけなので、それだけで点検を終えないようにしたいですね。実際の点検では、感度電流・不動作電流・動作時間の3つを測ります。低圧はKEW 5410、高圧のGR試験はLB-6が使いやすいです。値が出ないときは、接地や試験電流の帰路から疑ってみてください。試験前の停電範囲の確認と記録・報告まで、セットで考えておくと安心です。
ELCBやGRの試験は、保護継電器試験という大きな枠組みの一部です。試験がなぜ必要で、どんな型に分かれるのかという全体像は、保護継電器試験の基礎|なぜ行い、何を試験するのかで整理しています。
なお、Lo-Z測定は測定器を通して大地へ電流を流すため、上位に漏電遮断器があると動作させてしまうことがあります。その注意点はブレーカを切ったのに電圧がある|誘導電圧とLo-Z測定で解説しています。


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