DGR試験の手順|GRとの違いと位相特性試験の読み方

DGR(地絡方向継電器)の解説記事のアイキャッチ画像。動作・電源・整定のランプと整定角つまみを備えたDGR本体、電源からCB・CT・VTを経て地絡事故点に至る単線図、地絡電圧Voと地絡電流Ioの位相角θを示したベクトル図を並べている。 保護継電器の試験

GRとDGRの違いを聞かれて、うまく説明できない。位相と言われると身構えてしまう。

違いは「電流の向き」を見ているかどうかです。

DGR(地絡方向継電器)の動作領域の概念図。ZCTが零相電流Ioを、ZPDが零相電圧Voを検出し、DGRが両者の位相角から地絡の方向を判別する。構内事故では動作領域に入って遮断信号を出力し、構外事故では不動作となってもらい事故を防ぐ。

GRとDGRは何が違うのか

GR(地絡継電器)は零相電流Ioだけで動作します。整定値を超えれば動作する、単純な仕組みです。

DGRは零相電圧Voも見ます。さらに、VoとIoの位相差も見ます。

地絡方向継電器の動作を示すベクトル図。VoとIoの位相角で判定する。位相角が整定した範囲内にあるときは正方向と判定して動作し、範囲を超えると逆方向と判定して不動作になる。

位相まで見るのは、地絡が構内で起きたのか、系統側で起きたのかを区別するためです。

区別が必要な理由は、もらい事故です。系統側の地絡で、自分の構内の継電器が動作してしまう現象です。

構内のケーブルが長いと起こりやすくなります。ケーブルの対地静電容量を通って電流が流れるためです。

この電流は、GRから見れば地絡電流と区別がつきません。DGRは方向を判別して、これを防ぎます。

検出する機器も分かれています。

  • ZCT(零相変流器):零相電流Ioを検出する
  • ZPD(零相電圧検出装置):零相電圧Voを検出する

GRはZCTだけで動きます。

DGRはGRの上位機種ではありません。電流が合っていても、電圧と位相がそろわなければ動作しない継電器です。

試験前の準備と結線

準備の基本はOCRと同じです。整定値の記録、切離し端子の操作、停電範囲の周知は共通で、手順は誘導形OCRの試験手順|円板形過電流継電器の実践ガイドで扱いました。

それがなぜ必要かという背景は、親記事保護継電器試験の基礎|なぜ行い、何を試験するのかで扱っています。

記録する整定値はGRより項目が増えます。

  • 動作電流
  • 動作電圧
  • 位相(最大感度位相角)
  • 時限

写真も残してください。位相の設定は数値だけでは分かりにくいためです。

結線は3系統になります。

  • 電流回路:試験器からZCT二次側へ
  • 電圧回路:試験器からZPD回路へ
  • 接点:継電器の動作接点を試験器の検出入力へ

OCRとの違いは、電圧回路が増えることです。

配線が増えるぶん結線ミスが起きやすくなります。印加の前に、どの線がどの回路かを一本ずつ確認してください。

ZCT二次側とZPD回路は、切離し端子で系統から分離します。分離が不完全だと、試験電流が系統側へ回り込みます。

試験器は無ひずみ試験機を使っています。位相まで振れる機種なので、OCRからDGRまで機器を持ち替えずに進められます。

電圧回路も、電流回路と一緒に最初から結線しておきます。電流だけ流しても、DGRは動作しません。

動作電流試験

DGRは電圧と電流がそろわないと動作しません。

そのため、電流を測るときは電圧を先に固定します。整定値より十分高い電圧を加えた状態にします。

位相も動作領域の中に入れておきます。これで電流だけが動作を決める条件になります。

手順は次のとおりです。

  • 電圧を整定以上に固定する
  • 位相を動作領域内に設定する
  • 電流を0から一定の速さで上げる
  • 動作した電流値を読み、記録する
  • 電流を下げ、復帰値を確認する

電流の上げ方はOCRと同じで、一定の速さで滑らかに上げます。

判定は整定表とメーカー資料で確認してください。

値が出ないときは、まずZCTの極性を疑います。極性が逆だと、位相が180度ずれた状態になります。

動作領域から外れるため、電流を上げても動作しません。不良と決めつける前に結線を見てください。

出力レンジも確認します。大きすぎると細かい値を追い込めません。

電流が合っていても、それだけで保護は成立しません。

動作しないときは、継電器の不良を疑う前に、位相が動作領域の中に入っているかを確認します。

動作電圧試験

今度は固定するものを入れ替えます。電流を整定以上に固定し、電圧を上げていきます。

手順は次のとおりです。

  • 電流を整定以上に固定する
  • 位相を動作領域内に設定する
  • 電圧を0から一定の速さで上げる
  • 動作した電圧値を読み、記録する
  • 電圧を下げ、復帰値を確認する

ここで押さえてほしいのが、AND条件という考え方です。

DGRは、電流・電圧・位相の3つがすべて条件を満たしたときだけ動作します。どれか1つでも外れれば動作しません。

動作電流試験に合格しても、確かめたのは条件の1つです。3つそろって、初めて保護が成立します。

系統によっては、地絡時に十分なVoが出ないことがあります。接地方式によって零相電圧の大きさが変わるためです。考え方は設備ごとに異なるので、整定表と設計資料で確認してください。零相電圧だけで地絡を検出するOVGR(地絡過電圧継電器)の試験は、OVGRの試験方法にまとめています。

ZPD回路は結線を取り違えやすいところです。意図した電圧が加わっているか、記録の前に確認します。

位相特性試験と慣性不動作試験

ここがDGR試験の難しいところです。

位相特性とは、VoとIoの位相差によって動作するかどうかが決まる性質です。同じ大きさの電流でも、位相が違えば結果が変わります。

地絡の方向によって、VoとIoの位相関係が変わるからです。

構内で地絡が起きたときと、系統側で起きたときでは、電流の向きが逆になります。向きの違いが、位相差として現れます。

DGRはこれを利用し、特定の位相範囲でだけ動作するように作られています。

この範囲を動作領域と呼びます。範囲の外は不動作領域です。動作領域の中心にあたる位相を、最大感度位相角と呼びます。

試験では、位相を振って境界を測ります。手順は次のとおりです。

  • 電流と電圧を、動作する大きさに固定する
  • 位相を最大感度位相角に合わせ、動作を確認する
  • 位相を少しずつ進み側へ動かし、動作しなくなる点を読む
  • 同じように遅れ側へ動かし、境界を読む
  • 両側の境界値を記録する

測っているのは、動作領域の広さです。境界が整定どおりかを確認します。

ここで、この記事で最も伝えたい点を書きます。

この試験は、動くことの確認だけではありません。方向が逆のとき、つまり系統側の事故で動作しないことの確認でもあります。

不動作領域で動いてしまえば、もらい事故は防げません。動作領域の確認と同じ重みで見てください。

次は位相の基準です。ここを曖昧にしたまま進めると、値が合いません。

私がつまずいたのは、ここでした。位相の基準を線間電圧に取るか相電圧に取るかで、30度変わります。これを分かっていなかったため、測定値が想定と食い違いました。

試験器の表示が進みなのか遅れなのかも、最初は分かりませんでした。基準を明確にしてから測る。位相特性試験で一番大事なのは、この一点だと考えています。

試験の前に確認する項目は3つです。

  • 位相の基準は線間電圧か、相電圧か
  • 試験器の表示は進み方向か、遅れ方向か
  • 整定表の位相は、どの基準で書かれた値か

3つがそろって、初めて測定値と整定値を比べられます。

慣性不動作試験は、瞬間的な入力で動作しないことを確認する試験です。

雷や開閉サージで、ごく短い時間だけ電流が流れることがあります。これで遮断器が動作すれば、不要な停電になります。

私の現場では、慣性不動作試験は実施していません。設備や客先の仕様によって扱いが変わる項目です。実施の要否は点検仕様書で確認してください。

位相は、どこを基準にした角度なのかを確認してから測ります。基準が違うと、整定値と比べられません。

連動試験と後始末、まとめ

連動試験は、継電器の接点が閉じてから遮断器が開くまでを一連で確認します。

  • 切離し端子を通常の状態へ戻す
  • 継電器が動作する条件を加える
  • 遮断器が開放することを確認する
  • 表示灯、警報、記録装置の動作を確認する

接点が閉じても、その先の配線が切れていれば遮断器は開きません。特性試験とは別に確認します。

後始末の項目は次のとおりです。

  • 整定値を試験前の記録どおりに戻す
  • 切離し端子を復旧する
  • ZCT二次側の短絡を解除する
  • 端子の締付を確認する

整定値の戻しは2人で確認します。位相の設定は見落としやすいため、特に注意してください。

DGR試験は、動くことと動かないことの両方を確認する試験です。動作領域で動くこと、不動作領域で動かないこと。この2つがそろって、もらい事故を防げます。

成績書は前回値と並べて残してください。位相の境界値は、変化が出れば機器の状態を知る手がかりになります。

位相は、最初は取っつきにくい概念です。ただ、基準さえ決めてしまえば、あとは数値を読むだけです。

試験の全体像や、ほかの継電器で何を確認するのかは、親記事保護継電器試験の基礎|なぜ行い、何を試験するのかでまとめています。

DGRの「67」やGRの「64」という番号の由来、64Bのように後ろに英字がつく表記については制御器具番号(デバイス番号)の読み方にまとめています。

方向性を持つ継電器は、CT・VTの極性が合っていることが前提になります。極性試験の手順はCT・VTの試験方法にまとめました。

電気ライオン

水力発電所で、電気設備の保守と現地試験を担当しています。経験は10年ほど。
継電器試験、無水・有水試験、測定器の使い方など、自分の手でやってきたことだけを書いています。
電験三種、第一種電気工事士、1級電気工事施工管理技士、消防設備士甲種第4類。

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