OVGR(地絡過電圧継電器)の試験方法|試験プラグからの結線、動作電圧・動作時間と連動の確認

保護継電器盤の試験端子にクリップで試験リード線をつなぎ、試験器を操作する様子 保護継電器の試験

試験プラグを差し、試験器で電圧を上げていく。整定値を超えても、OVGRが動きません。

継電器の故障を疑って、回路を一つずつ追いました。原因は、継電器の制御電源が入っていなかったことでした。電圧を入れるだけでは動かない、制御電源が必要なタイプだったのです。

OVGRの試験そのものは、手順が少なく、難しいものではありません。その代わり、こうした準備の抜けで止まりやすい試験です。

OVGR(地絡過電圧継電器)とは

OVGRは、地絡が起きたときに現れる零相電圧を検出して動作する継電器です。器具番号は「64」です。

私が試験しているのは、水力発電所の系統連系用のOVGRです。連系している系統側で地絡が起きたときに、発電所を系統から切り離すためのものです。

番号の意味は制御器具番号(デバイス番号)一覧にまとめています。地絡の方向まで見る継電器は、DGR試験の手順で扱っています。

零相電圧はGPTの三次回路から取る

零相電圧は、GPT(接地形計器用変圧器)の三次回路から取っています。三次巻線を開放三角結線(オープンデルタ)にしておくと、ふだんは3相の電圧が打ち消し合ってほぼ0Vです。地絡が起きると打ち消し合わなくなり、零相電圧が現れます。

完全地絡のときにGPT三次に出る電圧は、110Vの仕様が多いです。

整定は完全地絡時の20%が多い

整定は、完全地絡時の零相電圧(一線地絡電圧)の20%になっていることが多いです。完全地絡で110Vが出るGPTなら、20%で約22Vです。

細かい整定値は、客先や設備によって変わります。試験の前に、整定表で必ず確認します。

試験項目

OVGRの試験で確認しているのは、次の3つです。

試験項目確認すること
動作電圧電圧を少しずつ上げて、動作した電圧を読む
動作時間整定値の130%と150%の電圧を加えて、動作までの時間を測る
結合動作試験(連動)遮断器のトリップ、配電盤の警報表示、ベルの鳴動、制御所での表示

保護継電器試験の全体の考え方は、保護継電器試験とはにまとめています。

試験器と試験配線

試験器は、NF回路設計ブロックの無ひずみ試験器を使っています。電圧を滑らかに上げられるので、動作電圧を読む作業がやりやすい試験器です。UVR・OVRの試験でも同じものを使っています。

電圧は、試験プラグから入れます。試験プラグを差すと、GPT三次からの回路が継電器から切り離され、試験器の電圧を継電器側に加えられるようになります。

OVGRの試験配線図。GPT三次(オープンデルタ)から試験端子を経てOVGRへ。試験プラグで変成器側を切り離し、無ひずみ試験器の電圧を継電器側に加える

試験の前に確認すること

変成器側が短絡されていないか

試験プラグを入れる前に、テスターで導通を確認し、変成器側(GPT三次側)が短絡されていないかを見ます。

CT回路用の試験プラグには、差し込むと変成器側を短絡するタイプがあります。これを誤ってVT・GPTの回路に差すと、変成器側を短絡してしまいます。差そうとしているプラグが合っているかも、ここで確かめます。

VTやGPTの二次・三次側は、短絡してはいけない回路です。CTとは扱いが逆になります。この違いはCT・VTの試験方法で詳しく書いています。

不要な警報やトリップが出ないか

OVGRが動作したとき、どこに信号が行くのかを回路で確認します。不要な警報やトリップが出るようであれば、リレーロックやトリップロックをかけてから試験に入ります。

制御電源が入っているか

冒頭の話です。静止形やデジタル形の継電器には、試験電圧とは別に制御電源が必要なものがあります。電源が入っていなければ、電圧をいくら上げても動作しません。

試験を始める前に、継電器の電源表示を見ておきます。

試験の手順

動作電圧

試験器の電圧を0Vから少しずつ上げていき、継電器が動作した電圧を読みます。急に上げると、動作した瞬間の値を読み損ないます。

動作時間

整定値の130%と150%の電圧を、それぞれ一気に加えて、動作までの時間を測ります。完全地絡で110V・整定20%(約22V)の例なら、130%で約28.6V、150%で約33Vです。

130%と150%のどちらでも、整定どおりの時間で動作するかを確かめます。

結合動作試験

最後に、継電器を動作させて、その先まで信号が届くかを確認します。見るのは次の4つです。

  • 遮断器がトリップすること
  • 配電盤に警報が表示されること
  • ベルが鳴ること
  • 制御所でも表示が出ること

継電器から遮断器までの経路の確かめ方は、保護連動試験とはで詳しく扱っています。

記録に残すもの

報告書には、測定値だけでなく、次のものも書いておきます。

  • 整定値(動作電圧・動作時間)
  • 継電器の仕様(メーカー、形式など)
  • 動作電圧の測定値
  • 130%と150%での動作時間
  • 結合動作試験の結果

整定値と仕様が一緒に残っていれば、次の点検で前回値と比べるときに迷いません。

ほかの測定器をどう使い分けているかは、現場で使う電気計測器の使い分けにまとめています。

まとめ

  • OVGRは零相電圧を検出する継電器。系統連系用では、系統側の地絡で発電所を切り離す
  • 零相電圧はGPTの三次回路から取る。完全地絡で110Vの仕様が多い
  • 整定は完全地絡時の20%が多いが、細かくは客先・設備による
  • 試験項目は、動作電圧、130%・150%の動作時間、結合動作試験
  • 試験プラグを入れる前に、変成器側が短絡されていないかをテスターで確認する
  • 動かないときは、制御電源が入っているかを最初に見る

手順は少ない試験ですが、準備の抜けで止まります。試験の前に、制御電源と回路の確認を済ませておくのがいちばんの近道です。

電気ライオン

水力発電所で、電気設備の保守と現地試験を担当しています。経験は10年ほど。
継電器試験、無水・有水試験、測定器の使い方など、自分の手でやってきたことだけを書いています。
電験三種、第一種電気工事士、1級電気工事施工管理技士、消防設備士甲種第4類。

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