UVRの成績書に「復帰値」という欄がある。動作値との違いが分からないまま、なんとなく数字を埋めていないでしょうか。
動作値と復帰値の差には、ちゃんと理由があります。
後半では、円板形UVRで整定タップと実際の動作値が大きくずれていた事例も紹介します。
UVRとOVRは何を守る継電器か
OCRやDGRが電流を見る継電器であるのに対し、UVRとOVRは電圧を見る継電器です。
- UVR(不足電圧継電器・27):電圧が整定値まで下がったときに動作します
- OVR(過電圧継電器・59):電圧が整定値まで上がったときに動作します
水力発電所では、母線や発電機の電圧低下を検出する用途で使います。所内電圧が来ているかどうかを見る電圧継電器(84)も、同じ系統の機器です。
電圧が下がるということは、系統のどこかで異常が起きているか、電源が失われているということです。そのまま運転を続ければ機器を傷めますし、電源が復帰したときに一斉に再始動して別の問題を引き起こします。UVRはその検出を担っています。
保護継電器試験の全体像は保護継電器試験の基礎で整理しています。この記事はそのうちUVR・OVRを扱うものです。
整定値を見る前に、その継電器が何を検出するために付いているのかを確認しておきます。
試験項目は点検の種類で変わる
UVR・OVRの試験項目は3つです。
| 項目 | UVR | OVR |
|---|---|---|
| 動作値 | 電圧を下げて測る | 電圧を上げて測る |
| 復帰値 | 電圧を上げて測る | 電圧を下げて測る |
| 動作時間 | 整定値到達から動作まで | 同左 |
ここで押さえておきたいのは、すべてを毎回測るわけではないということです。
定期点検では動作値の確認が中心になります。限られた停電時間の中で複数の継電器を試験するため、項目を絞ります。
新設備の竣工試験では動作時間まで測定します。この段階では、その設備の基準値をつくる作業でもあるからです。あとから比較するための出発点がなければ、経年での変化を追えません。
OCRやDGRとの一番の違いは、ここに復帰値が入ることです。
竣工試験と定期点検では、試験する項目が違います。同じ項目でやろうとすると、時間が足りなくなります。
復帰値をなぜ確認するのか
動作値と復帰値は一致しない
UVRを例にします。電圧を下げていくと、ある電圧で動作します。これが動作値です。
では、そこから電圧を上げていけば、同じ電圧で復帰するのか。実際には、動作した電圧より少し高い電圧まで戻さないと復帰しません。
OVRは逆で、動作した電圧より少し低い電圧まで下げないと復帰しません。
この差をヒステリシスと呼びます。動作値に対する復帰値の比が復帰率です。

なぜ差を持たせてあるのか
もし動作値と復帰値が同じだったら、どうなるでしょうか。
電圧が整定値のちょうど付近で揺れているとき、継電器は動作と復帰を細かく繰り返します。接点がばたつき、その先の機器まで巻き込んで誤動作します。
だから意図的に差を持たせてあります。差があるのは不良ではなく、そうなるように作られているということです。ここを知らないと、測定値を見て「動作値と復帰値が違う、おかしい」と思ってしまいます。
差の大きさは設備によって違う
復帰値と動作値の差がどれくらいかは、継電器の機種や整定によって変わります。一律の目安はありません。
判断のよりどころになるのは、メーカーの仕様書と、その設備の前回値です。仕様の範囲に収まっているか、前回から変化していないか。この2つで見ます。
復帰値も、動作値と同じように測って成績書に記入します。
試験の手順
UVRの場合は次の流れです。
- 試験器から定格電圧を印加する
- 電圧を徐々に下げていき、動作した電圧を読む(動作値)
- そこから電圧を徐々に上げていき、復帰した電圧を読む(復帰値)
- 竣工試験では、整定値に達してから動作するまでの時間を測定する
OVRは操作が逆になります。定格から電圧を上げていって動作値を読み、そこから下げて復帰値を読みます。
電圧の変え方にはコツがあります。速く動かしすぎると、動作した瞬間の値を読み損ないます。整定値に近づいたら、ゆっくり変化させてください。
各継電器の具体的な試験手順は、誘導形OCRとDGRの記事でも扱っています。
電圧はゆっくり変えます。速すぎると、動作値を実際より低く(OVRなら高く)読んでしまいます。
試験機に求められるもの
継電器試験用の電圧・電流を出せる試験機を使います。選定で効いてくるのは次の点です。
- 確度が良いこと:測定値そのものの信頼性に直結します。
- デジタル数値で読めること:アナログの指針を目分量で読むと、測定者によって値がばらつきます。数値表示なら、誰が測っても同じ値になります。成績書を年ごとに比較する以上、この再現性は重要です。
- カウンタを備えていること:動作時間を正確に測るために必要です。ストップウォッチでは、竣工試験で求められる精度に届きません。
- 継電器の制御電源を出力できること:機種によっては、試験機から制御電源を供給できます。別途電源を用意する手間が減ります。
- 異常時に出力をカットする保護機能があること:誤って過大な出力を出したとき、継電器や自分を守ります。
私はNF回路設計ブロックの試験機を使っています。はじめは操作に慣れるまで苦労しましたが、数値で読めることの安心感は大きいです。
円板形UVRで動作値が大きくずれていた話
古い円板形のUVRを試験したときのことです。
整定タップに対して、実際の動作値が大きくずれていました。タップの目盛どおりの電圧では動作せず、かなり離れた電圧で動作する状態です。
その場での対応として、整定タップを変更しました。狙いの電圧で動作するよう、タップの位置をずらして実動作値を合わせたわけです。応急処置としては成立します。
ただし、これで直ったわけではありません。タップの目盛と実動作値が対応しなくなっていること自体が、特性の劣化を示しています。いまはタップをずらして帳尻を合わせられても、劣化が進めばまたずれます。次に同じ手が使えるとも限りません。
結果として、この継電器は早急な取替計画の対象になりました。
応急処置で数値を合わせることと、機器が健全であることは別です。その場で合わせられたとしても、記録に残して更新につなげる。試験の役割はここまで含みます。
安全上の注意
- 試験前にVT(計器用変圧器)の二次側を切り離し、逆加電圧を防ぐ
- 試験端子・切離し端子を扱う順序を守る
- 整定タップを変更した場合は、変更前後の値を必ず記録する
- 試験後、整定が意図した位置にあることを確認する
UVR・OVRの試験は停電作業として実施するのが基本です。停電範囲を確認し、関係者へ周知してから作業に入ってください。
整定タップの記録は特に重要です。応急処置でタップを動かした場合、その事実が引き継がれなければ、次の担当者は目盛どおりの整定だと思い込みます。
まとめ
- UVRは電圧低下、OVRは電圧上昇を検出する。電流を見るOCR・DGRとは対になる継電器
- 試験項目は動作値・復帰値・動作時間。
- 定期点検では動作値が中心、竣工試験では動作時間まで測る
- 動作値と復帰値は一致しない。差はヒステリシスであり、正常な設計
- 差の大きさは設備による。仕様書と前回値で判断する
- 応急処置で数値を合わせても、劣化は直っていない。記録して更新につなげる
継電器が動作したあと、その信号が遮断器まで届くかを確認するのが連動試験です。あわせて保護連動試験とはも読んでみてください。
関連記事:保護継電器試験の基礎/誘導形OCRの試験手順/DGR試験の手順/保護連動試験とは
UVRの「27」、OVRの「59」という番号の意味や、27Bのように後ろに英字がつく表記については制御器具番号(デバイス番号)の読み方で解説しています。


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