継電器が動作したら、設備は止まる。無水試験で確認したはずのことです。
それでも、水を入れてからもう一度やります。実際に回っている機械が、どんな順序で、どれだけの時間をかけて止まるのか。それは水を通してみないと分かりません。
故障停止試験とは何か
継電器を動作させて故障を模擬し、各停止区分の順序どおりに安全に停止できるかを確認する試験です。
水車発電機の停止には区分があります。何が起きたかによって、どこまで遮断するかが変わる仕組みです。詳しくは水車発電機の停止区分にまとめました。
故障停止試験では、その区分ごとに実際に動作させ、決められた順序で、決められたところまで止まることを確かめます。
なぜ有水でもう一度やるのか
保護継電器の単体試験も、保護連動試験も、無水試験の段階で済ませています。継電器が動作すれば遮断器がトリップすることは、そこで確認できています。
それでも有水でやり直すのは、水を入れて実際に機器がどう振る舞うかを見たいからです。
無水で確認できるのは、信号が正しく飛ぶかどうかまでです。実際の停止までの時間や、機器の動作状況は分かりません。
回っている機械を止めるには時間がかかります。ガイドベーンが閉じ、遮断器が開き、ブレーキがかかり、回転が落ちていく。その一連が、どんな順序で、どれだけの時間で進むのか。これは水を通した状態でしか測れません。
模擬する故障
86-1と86-2の両方を行います。停止区分が違うので、止まる範囲も変わります。
油圧操作の設備では、油圧低下でも実施します。油圧が失われたときに、機械が安全側へ動くかを確かめる必要があるためです。
動作させる継電器は任意のものを選びます。同じ86に入る故障であれば、どの継電器から入っても、その先は共通だからです。86を経由したあとの動作は、入口がどれでも変わりません。
区分によって、止まる順序が変わる
86-1と86-2では、止まる順序が逆になります。
86-1(非常停止)は電気的な故障に対する区分です。発電機遮断器をただちに開放し、系統から切り離してから、水を絞って停止させます。故障電流を流し続けないためです。
86-2(急停止)は機械的な故障に対する区分です。先に水を絞り、出力が落ちて無負荷を検出してから遮断器を開放します。水が入ったまま先に遮断器を開けば、負荷を失った回転体が加速してしまうためです。

この違いは、試験で測る時間の並び順にそのまま現れます。
- 86-1:遮断器開放が先。そのあとガイドベーンが閉じる
- 86-2:ガイドベーンが閉じるのが先。そのあと遮断器が開放される
記録を見れば、どちらの順序で動いたかが分かります。設計どおりに動いているか、逆になっていないか。区分の考え方を知らずに時間だけ測っていると、順序が入れ替わっていても気づけません。
停止区分そのものの考え方は水車発電機の停止区分にまとめました。なお、どの故障をどの区分に割り付けるかは電気所ごとに違います。同じ「軸受温度高」でも、急停止の設備と警報の設備があります。試験の前に、その設備の運転フロー図で確認してください。
故障のかけ方
継電器を強制動作させます。
実際に故障を起こすわけにはいかないので、継電器そのものを動かして、その先の流れを確認します。強制動作のやり方は保護連動試験と同じ考え方です。
測定する時間
継電器が動作してから、完全に止まるまでを見ます。途中の各段階で時間を測ります。
- 遮断器開放までの時間
- ブレーキ動作までの時間
- ガイドベーン全閉までの時間
- 入口弁全閉までの時間
- 完全停止までの時間
リレー動作を起点として、それぞれ何秒かかったかを記録します。
このうちガイドベーンの閉じる速さは、水を通す前の無水の段階で一度確かめ、設計値に合わせておきます。その手順は調速機(GOV)の動作試験|無水で確認する項目とガイドベーン開閉速度の調整にまとめています。
この時間は、次に同じ試験をしたときの比較材料になります。前回より遅くなっていれば、どこかに変化があったということです。
メモリハイコーダで記録する信号
人が計る時間とは別に、記録装置でも取ります。取り込むのは次の信号です。
| 信号 | 見たいこと |
|---|---|
| 86信号 | 停止の起点 |
| 電圧 | 発電機の状態 |
| 電流 | 遮断の瞬間 |
| 回転速度 | 停止までの落ち方 |
| 水圧 | 圧力の変化 |
| ガイドベーン開度 | 水を絞る動き |
| 入口弁閉 | 入口弁の動作 |
| 側路弁閉 | 側路弁の動作 |
| 遮断器信号 | 遮断器の開閉 |
人の手による計測と、記録装置の両方を使います。人が見ているのは「どこまで進んだか」、記録装置が残しているのは「その間に何が起きていたか」です。役割が違います。
実際に記録すると、こう見えます。停止区分によって、並び方が変わります。

86-1では、遮断器が先に開きます。負荷を失った回転体が一時的に加速するため、回転速度が小さく盛り上がります。

86-2では、この盛り上がりがありません。先に水を絞っているからです。機械的な故障で水を先に絞る理由が、波形の差にそのまま出ています。
そして、どちらの記録にも共通していることがあります。入口弁が全閉するところで、水圧が跳ねています。
記録から見つけた不具合
入口弁が全閉となるタイミングで、水圧が上昇していました。
気づいたのは、試験の最中ではありません。オシロのデータを見ていて見つけました。停止そのものは正常に完了していたので、その場では誰も違和感を持っていませんでした。
原因はガイドベーンの漏水
調べると、原因はガイドベーンの漏水でした。
ガイドベーンは全閉にしても、多少の漏水があります。漏水があるということは、わずかでも水が流れているということです。
その流れがある状態で入口弁が全閉すると、動いていた水が行き場を失います。結果として圧力が跳ね上がっていました。負荷遮断試験で見る水圧上昇と、理屈は同じです。
シーケンスを変更して改善した
対策は、側路弁の使い方を変えることでした。

側路弁は、入口弁をまたぐバイパス管に付いています。本来は、入口弁を開ける前に前後の圧力を均衡させるための弁です。差圧がかかったままでは入口弁を動かせないため、先に側路弁で水を通して圧力をそろえます。
停止前に側路弁を開放しておきます。そうすれば、入口弁が閉じていく間も、水は側路弁を通って流れ続けます。行き場を失うことがありません。
そして、入口弁の全閉を確認してから側路弁を閉める。この順序に変更して、圧力上昇はなくなりました。

記録がなければ見つからなかった
この不具合について、覚えておきたいことがあります。
停止は正常に完了していました。順序どおりに、決められた範囲まで止まっていた。合否だけを見れば合格です。
人が見ていて気づくものでもありませんでした。圧力計の針が一瞬振れただけで、しかもその瞬間に誰かが見ているとは限りません。
オシロのデータを並べて、初めて分かりました。
記録を取るのは、合否を証明するためだけではありません。合格した試験の中にも、直すべきものが混じっていることがあります。それを見つけられるかどうかは、記録があるかどうかで決まります。
まとめ
故障停止試験は、継電器を強制動作させて、各停止区分の順序どおりに安全に停止できるかを確認する試験です。
無水試験でも信号の流れは確認していますが、実際の停止時間や機器の動作状況は、水を入れないと分かりません。だから有水でもう一度行います。
模擬するのは86-1と86-2の両方。油圧操作の設備では、油圧低下も実施します。86に入る故障であれば、動作させる継電器は任意のもので構いません。
測るのは、リレー動作を起点とした各段階の時間。遮断器開放、ブレーキ動作、ガイドベーン全閉、入口弁全閉、完全停止まで。86-1では遮断器開放が先、86-2ではガイドベーンが先になります。順序が区分どおりかも記録で確認します。
記録は、86信号・電圧・電流・回転速度・水圧・ガイドベーン開度・入口弁閉・側路弁閉・遮断器信号の9点をメモリハイコーダで取ります。
そして、その記録から不具合が見つかることがあります。私の場合、入口弁全閉時の水圧上昇でした。ガイドベーンの漏水が原因で、側路弁のシーケンスを変えて改善しました。
停止できたかどうかだけでなく、その間に何が起きていたかを残す。それが有水で行う故障停止試験の意味だと考えています。


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