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同期検定器の指針が、同期点にさしかかる。その瞬間、高圧検相器が鳴りやんだ。
「検相器と同期検定器がずれている」。その場にいた全員が、そう判断しかけました。
実際には、ずれていませんでした。その検相器は、位相がずれている間は鳴り、そろうと鳴りやむタイプだったのです。私たちは「鳴っている=同期している」と、逆に受け取っていました。
並列試験は、高圧検相から空並列、実並列へと進みます。投入を同期点の少し手前で狙う理由は、空並列の記録で見るとよく分かります。
並列試験とは何を確かめる試験か
並列試験で確かめることは、4つあります。
- 発電機を安全に系統へ並列できるか
- 自動同期装置が正しく動作するか
- 高圧検相を行い、同期検定器の動きが正しいか
- 低圧検相を行い、低圧側の回路が合っているか
並列とは、回っている発電機を、すでに電気が流れている系統につなぐことです。つなぐ瞬間に、発電機と系統の電圧・周波数・位相がそろっていなければ、大きな突入電流が流れます。系統を乱し、発電機にもショックを与えます。
同期投入の目安
同期投入では、突入電流を抑えるために、電圧差・周波数差・位相差を小さくしておく必要があります。突入電流を50%以下に抑えることを目標にすると、目安はこうなります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 電圧差 | 5%以内 |
| 位相差 | 5°以内 |
| 周波数差 | 0.1〜0.2Hz程度 |
ただし、これは目標としての目安です。並列試験の合否をこの数字で一律に決めるわけではありません。実際に何を見て判定するかは、あとの空並列の節で書きます。
試験の流れ
並列試験は、次の4つの段階で進めます。
| 段階 | 遮断器の位置 | 確認すること |
|---|---|---|
| ① 高圧検相 | 試験位置 | 同期検定器のタイミングが検相器と一致するか |
| ② 低圧検相 | 試験位置 | VT二次側の回路が合っているか |
| ③ 空並列 | 試験位置 | 自動同期装置の投入タイミングを確認・調整 |
| ④ 実並列 | 接続位置 | 調整した設定どおりに入るかを確認 |
発電機はいずれも無負荷運転の状態です。そして③までは、発電機遮断器を試験位置に置いたまま進めます。主回路はつながっていないので、系統にも発電機にも影響はありません。
発電機遮断器(52)や同期検出装置(25)といった番号の意味は、制御器具番号(デバイス番号)一覧にまとめています。
① 高圧検相と同期検定器の確認
キュービクルで、高圧検相器を発電機側と系統側の両方に接触させます。そして、同期検定器が示す同期のタイミングと、高圧検相器が示す同期のタイミングが一致しているかを確認します。
同期検定器は、VTを通した電圧で位相を見ています。高圧検相器は、主回路の高圧を直接見ています。この2つが同じタイミングで同期を示せば、同期検定器は正しい位相を見ていると言えます。
使用しているのは、長谷川電機工業の光ファイバー式高圧検相器HPI-A6です。
保護具を必ず着用する
高圧検相は、充電された高圧部に検相器を接触させる作業です。次の保護具を必ず使用します。
- 高圧ゴム手袋
- ゴム長靴
- 高圧絶縁シート
着用する前に、次の3点を確認します。
- 電圧階級が合っているか:高圧で使える保護具であること。低圧用のゴム手袋では絶縁が足りません。
- 定期自主検査の期限内か:絶縁用保護具は、6か月以内ごとに絶縁性能の自主検査を行うことが決められています(労働安全衛生規則第351条)。検査済みの表示や記録で、期限が切れていないかを見ます。
- 傷や劣化がないか:使う前に、ピンホールや亀裂、ひび割れがないかを確認します。ゴム手袋は、空気を入れて漏れがないかを見ます。
保護具は、着けていれば安全というものではありません。電圧に合っていないもの、期限の切れたものを着けていても、身を守ってはくれません。
検相器の鳴り方を、全員でそろえておく
冒頭の話です。検相器は、機種によってどういうときに鳴るのかが違います。私たちが使っていた検相器は、位相がずれている間は鳴り、そろうと鳴りやむタイプでした。
それを、その場の全員が「鳴っている=同期している」と逆に理解していました。だから、同期点で鳴りやんだのを見て、「同期検定器とずれている」と勘違いしかけたのです。
機器は正しく動いていました。間違っていたのは、読み方をそろえていなかったことです。
対策は単純です。事前に取扱説明書で鳴り方を確認し、作業員全員で共有しておく。検相器を当てる人だけが知っていても足りません。同期検定器を見ている人、記録を取っている人も、同じ前提で判断できるようにしておきます。
② 低圧検相
高圧検相のあと、空並列の前に、低圧側でも検相を行います。
VT二次側の配電盤に試験プラグを挿入し、発電機側と系統側の2か所を突き合わせて、テスターで電圧を測ります。
ここで大事なのは、測る前に予想値を決めておくことです。試験シートには、それぞれの組み合わせについてベクトルから求めた予想値を書いておきます。測った値がその予想どおりになればOKです。
測るのは、同期検定器が同期点を指しているときです。VTはどちらもV結線でS相を接地しているので、発電機側も系統側も、R・S・Tを頂点とする一辺110Vの三角形で表せます。

同期点では、この2つの三角形がぴったり重なります。だから同じ相どうし(R–R、T–T)は0V、違う相どうし(R–T、T–R)は三角形の一辺で110Vになるはずです。測った値がこのとおりであれば、低圧側の回路は合っています。どこかで配線が入れ違っていれば、0Vになるはずの組み合わせで電圧が出ます。
高圧が合っていても、低圧で確かめる理由
高圧側で相が合っていることを確かめても、低圧側の回路が合っているとは限りません。VTの二次配線や盤内の配線が入れ違っていれば、高圧では正しくても、低圧側では違う位相を見ていることになります。
そして、同期検定器も自動同期装置も、見ているのはこの低圧側の電圧です。ここが違っていれば、装置は正しくない位相で「同期した」と判断してしまいます。だから、低圧側の回路が合っているかを、あらためて確かめます。
③ 空並列試験
ここからが並列試験の中心です。
発電機遮断器を試験位置に置いたまま、自動同期装置を「自動」にして、遮断器を投入させます。遮断器は試験位置にあるので、投入動作はしても主回路はつながりません。制御の動きだけを、本番と同じように確かめられる。これを空並列試験と呼んでいます。
記録するもの
メモリハイコーダで、次の3つを取り込みます。
| 記録する信号 | 見る目的 |
|---|---|
| ビート電圧 | 同期点(ビート電圧が最小になる点)を知るため |
| 遮断器の入切 | 遮断器が実際に入った瞬間を知るため |
| 25投入指令 | 自動同期装置が指令を出した瞬間を知るため |
25投入指令は、ASY-96の25接点(端子15・16)にDC電源を通して、別のチャンネルに取り込みます。接点が閉じた瞬間が、指令が出た瞬間です。
判定は、ビート電圧の最小点と、遮断器が実際に入った瞬間のずれで行います。
ビート電圧の取り込み方
ビート電圧は、自動同期投入装置ASY-96の取扱説明書にある接続例のとおりに取り込みます。
系統側と発電機側のVT二次(AC110V)に、それぞれ110V/5Vの小さなトランスをつなぎます。VT二次の110Vを、測定器に入れやすい電圧まで下げるためのものです。
ポイントは二次側のつなぎ方です。2台のトランスの二次側は、片方の端子(v)どうしをつなぎ、残りの端子(u)の間をメモリハイコーダの1チャンネルに入れます。
こうすると、測定器に入るのは系統側と発電機側の電圧の差になります。位相がそろっていれば差はほぼ0V、180°ずれれば5V+5Vで約10V。周波数がわずかに違うので、この差の電圧はゆっくり大きくなったり小さくなったりを繰り返します。これがビート電圧です。

遮断器漸進時間設定(25T)で合わせる
遮断器は、投入指令を受けてから実際に接点が閉じるまでに時間がかかります。そのため自動同期装置は、この時間を見込んで、同期点より少し手前で投入指令を出します。遮断器そのものの投入時間の測り方は、遮断器(VCB)の開閉時間測定にまとめています。
この見込み時間を調整するのが、自動同期装置の設定です。よく使われている第一エレクトロニクスの自動同期投入装置ASY-96では、遮断器漸進時間設定(25T)で調整します。記録を見て、遮断器が狙ったタイミングで入るように、この設定を詰めていきます。
同期点ちょうどではなく、20ms手前を狙う
ここが実務の勘所です。
理屈のうえでは、ビート電圧の最小点ちょうどで遮断器が入るのが理想です。ところが実際には、測定するたびに投入タイミングにばらつきが出ます。経験上、そのばらつきは20msくらいあります。同期点にぴったり合わせることは、まずできません。
ここでスロー側・ファスト側という言葉を整理しておきます。これは、発電機の周波数が系統に対して低いか、高いかを指します。同期検定器の指針の回る向きで見分けられます。
| 発電機の周波数 | 同期検定器の指針 | |
|---|---|---|
| スロー側 | 系統より低い | SLOW方向(反時計回り)に回る |
| ファスト側 | 系統より高い | FAST方向(時計回り)に回る |
指針の回る向きが「どちらが高いか」を、回る速さが「周波数差の大きさ」を表しています。ゆっくり回っているほど、周波数差は小さいということです。
そのうえで、あえてスロー側に寄せます。ファスト側で入るのを避けたいからです。スロー側、つまり発電機の周波数が系統よりわずかに低い状態で入れると、発電機は系統に引き上げられる形になり、投入の瞬間に加速する方向の力を受けます。実務的には、発電機へのショックを小さくするために、この向きで入れるのが望ましいとされています。
具体的には、ビート電圧の最小点より20msほど手前で遮断器が入るように調整します。ばらつきが20msあっても、同期点を越えてから入ることがない。経験上、これがちょうどいい位置です。

④ 実並列試験
空並列で問題がなければ、発電機遮断器を接続位置まで挿入し、実並列試験を行います。今度は主回路が実際につながります。
記録は空並列と同じく、メモリハイコーダでビート電圧・遮断器の入切・25投入指令を取ります。
ここで見るのは、空並列で合わせた設定どおりに入っているかです。実並列は調整後の確認試験なので、このタイミングで調整は行いません。設定どおりであることを確認して、並列試験は終了です。
並列が終われば、発電機は負荷を取れる状態になります。その先の負荷試験や負荷遮断試験は、負荷遮断試験とは|水車発電機を1/4から全負荷まで段階的に確認する手順にまとめています。なお負荷遮断試験では、自動同期装置が「自動」のままだと遮断後に再投入しようと働いてしまう、という話も書いています。
調整は空並列で済ませ、実並列は確認だけにする
この試験の組み立てで一番大事なのは、調整を試験位置で済ませることだと考えています。
空並列なら、投入タイミングが多少ずれていても、主回路はつながっていないので何も起きません。ずれを見て、設定を変えて、もう一度入れてみる。これを安全に繰り返せます。
実並列でタイミングがずれていれば、そのずれはそのまま突入電流になって系統と発電機にかかります。だから実並列では調整しない。空並列で詰めきった設定が、本番でもそのとおりに動くかを確かめるだけにします。
まとめ
並列試験は、高圧検相 → 低圧検相 → 空並列 → 実並列の順で進めます。
- 高圧検相で、同期検定器が正しい位相を見ているかを確かめる。検相器の鳴り方は、事前に全員でそろえておく
- 低圧検相で、VT二次側の回路が合っているかを確かめる。予想値は事前に試験シートへ書いておく
- 空並列で、投入タイミングを記録し、遮断器漸進時間設定(25T)で調整する。狙いは同期点の20msほど手前
- 実並列では調整せず、設定どおりに入るかを確認して終了
高圧が合っていても低圧を確かめる。同期点ちょうどではなく、ばらつきを見込んで手前を狙う。どちらも、「理屈では合っているはず」をそのまま信じない、という点で共通しています。
工程全体の流れは有水試験とは|水を通してから行う試験の流れと確認する項目をご覧ください。


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