運転中の発電機を、わざと系統から切り離す。
負荷遮断試験は、それを意図的に行う試験です。事故でしか起きないはずのことを、こちらから起こして確かめます。
何を見ているのか。速度が上がりすぎないかを見る試験だと説明されることが多いのですが、本当に確認したいのは、遮断されたあとに安全に無負荷運転へ移行できるかどうかです。
負荷遮断試験とは何か
発電機が負荷をとって運転している状態から、遮断器を開いて系統から切り離します。
このとき、発電機側では何が起きるか。電気的な負荷が一瞬でなくなります。それまで発電機を押さえつけていた力が消えるということです。
一方、水車には水が流れ続けています。押さえるものがなくなった状態で水が入り続ければ、回転速度は上がります。
ここで調速機(GOV)が働き、ガイドベーンを閉じて水の量を絞ります。速度上昇を抑え、無負荷運転の回転数へ落ち着かせる。この一連の動きが正しく働くかを確かめるのが、負荷遮断試験です。
確認するのは、安全に無負荷運転へ移行できるかどうか。そのうえで、水圧・回転速度・電圧が保証値の範囲に収まっていることを見ます。
速度・水圧・電圧を同時に見る理由
3つの値を並べて見るのには理由があります。
回転速度は、水を絞るのが遅ければ上がります。だから、ガイドベーンは速く閉じたい。
しかし、急に閉じれば水圧が上がります。流れていた水が行き場を失い、管の中で圧力として跳ね返ってくるからです。
つまり、速度を抑えることと、水圧を抑えることは、互いに引っ張り合う関係にあります。片方だけを見ていては判断できません。
電圧も見ます。負荷が外れれば端子電圧は上がろうとします。それをAVRが抑え込めるかを確認します。

閉じる速度を横軸にとると、この関係がはっきりします。ゆっくり閉じれば回転速度が上がり、速く閉じれば水圧が上がる。両方が保証値内に収まる範囲があり、その中に設定を置くことになります。
水圧の保証値が低い設備では、この範囲は狭くなります。狭ければ、調速機の設定だけでは両立できないこともあります。
3つそろって保証値内に入っていること。これが負荷遮断試験の合否です。
なぜ段階を踏むのか
いきなり全負荷で遮断することはしません。
1/4 → 2/4 → 3/4 → 4/4と、4段階で進めます。
大事なのは刻み方そのものではなく、段階ごとに止まることです。
試験ごとに結果を整理し、次に進んで良いかを判断します。記録を確認して、速度も水圧も電圧も想定どおりか。調速機の動きに不自然なところはないか。それを確かめてから次の負荷に進みます。
1/4で想定と違う結果が出たなら、そこで止まります。原因を調べ、必要なら調整をやり直す。その状態のまま全負荷で遮断すれば、どこまで振れるか分かりません。
段階を踏むのは、慎重を期すためというより、判断する機会を4回作るためだと考えています。
想定より回転が上がったときにしたこと
実際にありました。ある段階で、想定より回転速度が上がりました。
行ったのは、調速機のスピード調整です。ガイドベーンを閉じる速度を早くしました。水を絞るのが速くなれば、速度上昇は抑えられます。
ただし、前の節で書いたとおり、速く閉じれば水圧は上がります。それでも早くできたのは、水圧に余裕があったからです。
ここが判断の分かれ目でした。もし水圧が保証値ぎりぎりだったなら、閉じる速度を上げるという手は使えません。速度を抑えたいのに、抑える方法が圧力側で封じられている状態になります。
2つの値を並べて見ていたから、この手が使えると分かりました。速度だけを見ていたら、閉じる速度を早くして、今度は水圧で引っかかっていたかもしれません。
なお、閉じる速度は油圧の絞り弁で変えます。絞り弁がどこに付いているか、そして水を通す前の無水の段階でどう調整するかは、調速機(GOV)の動作試験|無水で確認する項目とガイドベーン開閉速度の調整にまとめています。
調整の結果は、ガイドベーン開度の記録に表れます。接線が立つほど等価閉鎖時間は短くなり、回転速度のピークは下がります。そのかわり水圧のピークは上がります。後述する2つの時間は、こういうときに前後を比べるための値です。
そして、これに気づけたのは段階を踏んでいたからです。次の負荷に進む前に調整できました。いきなり全負荷で遮断していたら、調整する機会そのものがありませんでした。
試験の前に済ませておくこと
故障停止試験を終わらせる
負荷遮断試験より先に、故障停止試験を終わらせておきます。
理由は単純です。何かあったときに止められることを、先に確認しておくためです。
これから意図的に機械を乱す試験をします。その前に、止める手段が確実に効くことを確かめておく。順序を逆にはできません。
自動同期装置を手動にする
自動同期装置は手動に切り替えておきます。
自動のままだと、遮断したあとに再投入しようとして調整制御が働きます。それでは試験になりません。見たいのは遮断されたあとの挙動なのに、制御が元へ戻そうとしてしまうからです。
ここは見落としやすいところです。遮断器を開く準備ばかりに気をとられていると、そのあとの制御まで意識が回りません。
私は手動にし忘れて、再試験になったことがあります。
遮断したあと、自動同期装置が働いて、そのまま再投入されました。制御が元へ戻そうとしたわけです。見たい挙動は記録できませんでした。
再投入されているので、機械は並列した状態に戻っています。その並列を確認し、負荷をとって、今度は手動にしてから遮断し直すことになります。切り替えひとつで、その一連をやり直しです。
以来、試験前の確認項目に入れています。遮断器の準備と同じ重さで確認すべきことだと思っています。
自動同期装置そのものの確認と、投入タイミングの調整は並列試験で行います。手順は発電機の並列試験|検相・空並列・実並列の手順と同期投入タイミングの調整にまとめています。
記録する項目
記録するのは次の5つです。
| 項目 | 何のために記録するか |
|---|---|
| 電流 | 遮断した瞬間を特定するため |
| 回転速度 | 速度上昇が保証値内かを見るため |
| 水圧 | 圧力上昇が保証値内かを見るため |
| 電圧 | 電圧上昇をAVRが抑えられているかを見るため |
| ガイドベーン開度 | 調速機がどう閉じたかを見るため |
電流を記録するのは、遮断点を把握するためです。電流がゼロになった瞬間が、時間軸の基準点になります。そこから何秒後に最高速度に達したのか、水圧がいつ跳ねたのか。基準がなければ読み取れません。
ガイドベーン開度だけは、性格が違います。回転速度や水圧は「どうなったか」の記録ですが、ガイドベーン開度は「調速機がどう動いたか」の記録です。
速度が上がりすぎたときに、その理由を探せるのはこちらです。閉じ始めが遅かったのか、閉じる速さが足りなかったのか。調整が必要になったとき、この記録があるかないかで話が変わります。

記録には日置(HIOKI)のメモリハイコーダを使っています。複数のチャンネルを同じ時間軸で記録できるので、5つの値を並べて読めます。
ガイドベーン開度から読み取る2つの時間
ガイドベーン開度の記録からは、開度の変化そのもの以外に、2つの時間が読み取れます。
デッドタイム。遮断してから、ガイドベーンが実際に動き出すまでの時間です。遮断と同時に閉じ始めるわけではありません。この間、水はそのまま流れ続けているので、回転速度は上がっていきます。
つまり、デッドタイムが長いほど、速度上昇のピークは高くなります。閉じる速度を早くしても、動き出しが遅ければその分は取り返せません。速度上昇を見るときは、閉鎖の速さだけでなく、動き出しまでの時間も見ておく必要があります。
等価閉鎖時間。閉鎖の曲線は直線ではありません。ゆっくり動き出し、途中で速くなり、また緩やかになって止まります。そこで、最も急な部分に接線を引き、遮断前の開度の線と全閉の線との交点をとって、その間隔を閉鎖時間として扱います。
始点が全開ではなく遮断前の開度であることに注意してください。1/4負荷と全負荷では、遮断前の開度が違います。同じ調速機の設定でも、負荷段階によって等価閉鎖時間は変わります。
この2つを記録しておくと、調速機の調整をしたときに何がどう変わったのかを比べられます。「速度が下がった」という結果だけでなく、「閉じる速度をこれだけ変えた結果として下がった」という形で残せます。
体制と合図
負荷遮断試験は、一人ではできません。
各項目の測定のために人員を配置します。記録装置の前だけでなく、測定点にも人が要ります。
連絡には無線機を使います。配置が離れるので、声は届きません。
そして、遮断の合図にはベルを使います。
無線機があるのに、なぜベルなのか。全員が同時に、確実に受け取れる合図が必要だからです。無線で一人ずつ呼びかけていては、タイミングがそろいません。
このベルは、試験前に必ず確認します。鳴らしてみて、配置した全員に聞こえるかを確かめておく。合図が届かなければ、試験そのものが成立しません。
準備の中に「合図の確認」が入っているのは、そういう理由です。
ベルの鳴らし方
ベルは、鳴らす回数と順番で意味を分けています。
1回目は試験準備。配置につく合図です。
2回目は遮断前測定。この合図で、各測定点が遮断前の値を読んで記録します。
3回目は三回鳴らします。カウントを合わせるためです。3音目で遮断します。「1、2、3」と数えるのと同じで、いつ来るかが全員に分かります。記録装置の前にいる人も、測定点にいる人も、同じ瞬間に身構えられます。
4回目は長く1回。無負荷運転で安定したという合図です。これで一連が終わります。
回数と長さで意味を変えているのは、音しか届かないからです。言葉を届けるなら無線機がありますが、タイミングをそろえるには向きません。ベルは意味を三回のカウントに置き換えることで、全員の呼吸を合わせています。

判定
判定は、メーカーの示す保証値に対して行います。
速度上昇、圧力上昇、電圧上昇。それぞれについて、この範囲に収まっていることという値が示されます。その中に入っていれば合格です。
保証値は設備ごとに違います。試験の前に、何をどこまで許すのかを確認しておいてください。記録を取ったあとで基準を探すことになれば、その場で判断できません。
まとめ
負荷遮断試験は、運転中の発電機を意図的に系統から切り離し、安全に無負荷運転へ移行できるかを確認する試験です。
確認するのは、回転速度・水圧・電圧の3つ。速度を抑えるために急いで閉じれば水圧が上がるという関係にあるため、まとめて見ないと判断できません。
負荷は1/4・2/4・3/4・4/4と段階を踏みます。段階ごとに結果を整理し、次に進んで良いかを判断します。
試験の前には、故障停止試験を終わらせておくこと、そして自動同期装置を手動にしておくこと。前者は止める手段の確認、後者は制御が試験を妨げないようにするためです。後者は、私が忘れて再試験になったところです。
想定より回転が上がったときは、調速機の閉じる速度を早くするという手があります。ただし水圧に余裕があることが前提です。速度と水圧を並べて見ていなければ、この判断はできません。
ガイドベーン開度の記録からは、デッドタイムと等価閉鎖時間が読み取れます。調整の前後を比べるときに使える値です。
記録は、電流・回転速度・水圧・電圧・ガイドベーン開度の5つ。メモリハイコーダで同じ時間軸に並べます。電流は遮断点の基準として使います。
体制は、測定点への人員配置、無線機での連絡、そしてベルによる遮断合図。ベルは試験前に鳴らして確認します。
判定はメーカーの保証値によります。基準は試験前に確認してください。
工程全体の位置づけは有水試験とはにまとめています。あわせて、水車発電機の停止区分とスピードセンサー(SSG)の試験方法も関連します。
負荷遮断試験の前に終わらせておく故障停止試験については故障停止試験とはにまとめました。


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