絶縁抵抗を測ろうとしてブレーカを切った。それなのに、メガーの活線警報が点灯する。
テスターを当てると、対地電圧が60Vありました。
回路は切ってあるのに、電圧がある。私は最初、どこかから電圧が回り込んでいると考えました。結論から言うと、これは回り込み電圧ではなく誘導電圧でした。
以下は、そのとき何を測って、どう判断したかの記録です。誘導電圧を疑う目安、Lo-Zテスターでの確認方法、Lo-Z測定そのものの注意点もあわせて書いておきます。
何が起きたのか
やろうとしていたのは、ごく普通の絶縁抵抗測定でした。
ブレーカを切り、無電圧を確認してからメガーを当てる。その手順のはずが、メガーの活線警報が点灯して測定できません。
テスターで確認すると、対地電圧が60V。低圧回路で60Vは無視できる値ではありません。
メガーの活線警報は、こういうときに効いてくれる機能です。気づかずに電圧のかかった回路へ試験電圧を加えれば、測定器を壊しかねません。絶縁抵抗計(メガー)の使い方でも触れています。
私はこれを回り込み電圧だと考えました。どこか別の回路から、切ったはずの回路へ電圧が入ってきている、と。
ここが間違いでした。
なお、あとから分かったことですが、このケーブルは動力ケーブルなどと長距離にわたって並走していました。誘導電圧が出る条件は、そろっていたわけです。ただし、この時点ではそこまで見えていませんでした。
回り込み電圧と誘導電圧は違う
同じように「電圧が出ている」と見えても、中身は別ものです。
| 回り込み電圧 | 誘導電圧 | |
|---|---|---|
| 何が起きているか | 別の回路から実際に電圧が入っている | 並行する充電された線路から静電的に電圧が現れている |
| 電流を流せるか | 流せる | ほとんど流せない |
| 危険性 | 感電する | 感電には至りにくい |
| 対処 | 配線を調べて切り離す | 遮へいや接地で抑える |
決定的な違いは、電流を流す力があるかどうかです。
回り込み電圧は、実際に給電経路があります。電圧の裏に電源があるので、電流を流せます。触れば感電します。
誘導電圧は違います。並行して走っている充電された線路との間に静電容量があり、そこを通って電圧が現れているだけです。ごくわずかな電流しか流せません。
問題は、普通のテスターでは両者を区別できないことです。
なぜ普通のテスターでは分からないのか
一般的なデジタルテスターの入力インピーダンスは、10MΩ程度あります。非常に高い抵抗で測っています。
入力インピーダンスが高いと、ほとんど電流を流さずに電圧を読めます。これは本来ありがたい性質です。測定対象に影響を与えないからです。
しかし、誘導電圧を測るときには裏目に出ます。わずかな電流しか流せない誘導電圧でも、10MΩの測定器なら電圧がそのまま表示されてしまうのです。
だから60Vと出ます。その60Vに、電流を流す力があるのかどうかは分かりません。
Lo-Z測定で確かめる
ここで使うのが、Lo-Z(ローZ/低インピーダンス)測定です。
Lo-Zとは何か
Lo-Z測定は、わざと低いインピーダンスで測る機能です。測定器の内部に低い抵抗を入れて、測りながら電流を引く形になります。
誘導電圧のように電流を流す力がないものは、負荷をかけた瞬間に電圧が下がります。一方、回り込み電圧のように裏に電源があるものは、負荷をかけても電圧が保たれます。
電圧の裏に電源があるかどうかを、負荷をかけて確かめる。これがLo-Z測定の考え方です。

フルーク113で測ったら数Vになった
私が使ったのはフルークの113です。Lo-Z測定ができるテスターです。
この機種をなぜ選んだのか、良かった点と物足りない点、そしてLo-Zを使うときの注意は、こちらにまとめました。フルーク113のレビュー|誘導電圧の切り分けに使うLo-Zテスターを選んだ理由
同じ箇所を測り直すと、60Vあった電圧が数Vまで下がりました。
これで判断がつきました。回り込み電圧ではなく、誘導電圧です。電流を引いた途端に電圧が保てなくなったのは、その裏に電源がないからです。
誘導電圧を疑う目安
Lo-Zテスターを当てる前に、通常のテスターだけでも見当をつけられます。
対地電圧が両端子とも同じ値で、端子間電圧が0Vのとき。このときは誘導電圧が疑わしいと考えています。
理由は、誘導電圧の現れ方にあります。並行する線路から静電的に誘導されるとき、その回路の電線はどれもほぼ同じように影響を受けます。だから、どの端子で測っても対地電圧はほぼ同じになります。
一方、端子間には電位差が生まれません。同じだけ持ち上がっているので、差はゼロです。

回り込み電圧なら、こうはなりません。特定の経路から入ってくるので、端子によって値が変わり、端子間にも電圧が出ます。
まず対地電圧と端子間電圧を測り、誘導電圧が疑わしければLo-Zで確かめる。この順番です。
Lo-Z測定の注意点
ここは必ず知っておいてください。
上位にELBがあれば、Lo-Z測定で動作する可能性があります。
理由は、Lo-Z測定そのものの仕組みにあります。低いインピーダンスで対地間を測ると、測定器を通して大地へ電流が流れます。これは漏電と同じ形になります。
上位の漏電遮断器(ELCB)から見れば、地絡電流が流れたのと区別がつきません。動作してしまえば、その先の回路がすべて停電します。
実際にトリップさせました
これは知識として書いているのではありません。実際に起きました。
職場の仲間が、Lo-Z測定を試しにやってみたときのことです。測った場所が、たまたまELBの負荷側でした。その場でトリップして、それで気づきました。
Lo-Zという機能を知っていても、「どこで使うか」までは意識が回っていませんでした。私たちは、トリップして初めてこの注意点を学びました。
Lo-Zを当てる前に、その回路の上位に何があるかを確認してください。停電させてよい範囲なのかを、測る前に判断しておく必要があります。ここは測ってからでは取り返しがつきません。
その後どうしたか
誘導電圧と分かったので、そのまま絶縁抵抗測定を行いました。
DC500Vのメガーで測定し、値は安定していました。誘導電圧が乗っていても、測定値は振れずに読めました。結果は良好で、この回路の絶縁に問題はありませんでした。
ただし、これで終わりにはしませんでした。誘導電圧そのものは残っているからです。
恒久対策として、ケーブルをシースアース付きに変更する計画を立てました。遮へいのあるケーブルに替えて接地すれば、並走する動力ケーブルからの静電的な影響を遮へいで受け止められます。誘導電圧そのものを減らす対策です。
原因は、動力ケーブルなどとの長距離の並走でした。距離が長いほど静電容量は大きくなり、誘導電圧も出やすくなります。ルートを変えられないのであれば、遮へいで対処するしかありません。
そして、対策が終わるまでの間の手当てです。
誘導電圧が出るブレーカに、表示札を付けました。
札を貼る場所をブレーカにしたのには理由があります。手が止まるのはメガーを当てた瞬間ですが、その前に必ずブレーカを操作します。ブレーカに札があれば、測る前に分かります。
私と同じように、切ったのに電圧が出ていて、活線警報が点灯して手が止まる。その時間をなくすためです。
ここは恒久対策そのものより大事かもしれません。原因が分かっているのに共有しなければ、次の人がまた同じ場所で立ち止まります。札一枚で済む話です。
ほかの測定器をどう使い分けているかは、現場で使う電気計測器の使い分けにまとめています。
まとめ
ブレーカを切ったのに電圧が出ている。このとき、回り込み電圧と誘導電圧のどちらなのかを見分ける必要があります。
普通のテスターでは区別できません。入力インピーダンスが10MΩと高いため、電流を流す力のない誘導電圧でも、そのまま電圧として表示されるからです。
まず、対地電圧と端子間電圧を測ります。両端子とも対地電圧が同じ値で、端子間電圧が0Vなら、誘導電圧が疑わしいと考えます。
次に、Lo-Zテスターで確かめます。低いインピーダンスで測って電圧が大きく下がれば、それは誘導電圧です。私の場合、60Vが数Vまで下がりました。
ただし、Lo-Z測定は上位のELBを動作させる可能性があります。測定器を通して大地へ電流を流すことになるためです。当てる前に、上位に何があるかを確認してください。
誘導電圧と分かれば、そのまま絶縁抵抗測定に進めます。値が安定して読めるなら、判定に支障はありません。
そのうえで、遮へい付きケーブルへの変更などの恒久対策と、対策までの見える化を考えてください。私は該当のブレーカに表示札を付けました。原因が分かったことを自分だけで持っていると、次の人がまた止まります。
絶縁抵抗測定そのものの手順は絶縁抵抗計(メガー)の使い方にまとめています。
なお、誘導電圧は二次回路でも問題になります。CT・VTの二次回路で接地を1か所にする理由も、循環電流による誤差を避けるためです。CT・VTの試験方法にまとめました。


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