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ブレーカを切ったのに、対地電圧が60V残っていました。メガーの活線警報も点灯して、絶縁抵抗が測れません。回り込み電圧なのか、それとも誘導電圧なのか。手持ちのテスターでは、そこから先へ進めませんでした。
そのときに切り分けの決め手になったのが、フルークのデジタルマルチメータ 113 です。
先に書いておくと、この記事は「これ1台あれば何でもできる」という紹介ではありません。むしろ逆で、できないことが多い機種です。それでも必要だと判断して、職場で機種を調べて選定し、購入してもらいました。普段の測定は別のテスターを使っていて、113はLoZ専用のサブ機として持ち出しています。
なぜフルーク113を選んだのか
目的が「誘導電圧かどうかの切り分け」だったから
機種から入ったのではなく、用途から入っています。
普通のテスターは入力インピーダンスが高いので、ごくわずかな誘導でも電圧として表示します。並走したケーブルから静電結合で乗っただけの電圧でも、数十Vと出ることがあります。これを「電気が来ている」と読んでしまうと、そこから先の調査が丸ごと別方向へ進みます。
LoZ(低インピーダンス測定)は、測定器側でわざと入力インピーダンスを下げて測る機能です。誘導電圧のように電流を流す能力のない電圧なら、LoZで測った瞬間に数Vまで落ちます。逆に、どこかから本当に回り込んでいる電圧なら、LoZで測っても落ちません。この差が、そのまま切り分けになります。
実際にこの方法で調査した経緯は、こちらにまとめています。ブレーカを切ったのに電圧がある|誘導電圧と回り込み電圧の見分け方とLo-Z測定
LoZが使える機種のなかで、一番機能が絞られていたから
LoZが使えるフルークの機種はいくつかあり、上位機種には非接触検電や電流測定が付いたものもあります。今回の目的には、どちらも要りませんでした。
必要なのは「電圧」「導通」「抵抗」、そしてLoZ。この4つが確実に使えれば十分で、それ以上は価格を上げるだけです。113はその線引きにちょうど合っていました。
測定器は迷ったときほど上位機種を選びがちですが、使わない機能は操作を増やすだけです。用途が決まっているなら、絞った機種のほうが現場では結果的に速い、というのが今回の実感でした。
使ってみて良かったところ
頑丈で、現場に持ち出すのが怖くない
点検では、測定器をぶつけたり、狭い盤の中に押し込んだりします。113は本体もケースもしっかりしていて、その扱いに耐えます。「壊したくないから丁寧に使う」となると測定が遅くなるので、気を使わずに使えること自体が作業速度につながります。
レンジの切り替えが早い
ロータリースイッチが素直で、電圧・導通・LoZの行き来に迷いません。盤の前で何度も切り替える作業なので、ここが遅いと地味に効いてきます。
測定値が出るまでが速い
端子に当ててから表示が落ち着くまでが短い。誘導電圧の調査は「同じ端子を何度も測って、値が安定しているかを見る」作業の繰り返しなので、1回あたりの待ち時間が短いことの効果は大きいです。
本体が小さく、片手で扱える
盤の中では、片手でリードを持ち、もう片方で本体を支える場面が多くなります。小さくて軽いと、無理な姿勢をとらずに済みます。
物足りないところ
正直に書くと、113だけでは業務は回りません。
- 電流が測れない……クランプメータを別に持つ前提になります。
- 周波数が測れない……発電機まわりでは周波数を見たい場面があるので、ここは別の測定器に頼ります。
そのため私は、113を「メインのテスターの置き換え」ではなく、LoZを使うための追加の1台として位置づけています。この割り切りができないなら、たぶん向きません。
LoZを使うときの注意|上位のELBが動作することがある
これは113の欠点ではなく、LoZという機能そのものの注意点です。
LoZは入力インピーダンスを下げて測るので、測定のときに測定器自身が電流を流します。対地間で測れば、その電流は地絡電流と同じ経路を通ります。上位にELB(漏電遮断器)や地絡継電器があると、それが不要動作することがあります。
実際、職場の仲間が試しに測ったときに、たまたまELBの負荷側だったためトリップしました。そこで初めて「LoZにはこういう副作用がある」と全員が知った、という順番でした。
止めてはいけない回路で、上位に何があるか分からないまま対地間をLoZで測るのは避けたほうがいいです。単線結線図で上位を確認してから使う。これだけで防げます。
向いている人・向いていない人
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 電圧・導通・抵抗を素早く確認したい人 | 電流を測りたい人 |
| 誘導電圧が発生しやすい設備を保守している人 | 周波数を測りたい人 |
| メインの測定器とは別にサブ機を1台持ちたい人 | 電子回路を細かく調べたい人 |
| LoZで切り分けをしたい人 | 1台ですべてを済ませたい人 |
通常のテスターにはLoZが付いていません。だから「LoZが要る仕事かどうか」が、そのまま判断の分かれ目になります。
ほかの測定器をどう使い分けているかは、現場で使う電気計測器の使い分けにまとめています。
まとめ
フルーク113は、万能な測定器ではありません。電流も周波数も測れません。それでも、ブレーカを切ったのに残る電圧の正体を確かめたいとき、LoZという機能ひとつで調査が前に進みます。
そして、その機能が要るかどうかは、設備を見ればだいたい決まります。長いケーブルが動力線と並走している設備を保守しているなら、いずれ同じ場面に出会います。そのときに1台あると、迷う時間がなくなります。
関連記事:ブレーカを切ったのに電圧がある|誘導電圧と回り込み電圧の見分け方とLo-Z測定/絶縁抵抗計(メガー)の使い方|測定手順とよくある失敗3選


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