停止指令を出す。負荷が下がり、遮断器が開き、ガイドベーンが閉じ、入口弁が閉じる。回転が落ちてブレーキがかかり、完全停止。ここまでは順調でした。
ところが、最後に止まるはずの補機が止まりません。
原因はシーケンサーの回路の間違いでした。機器はどれも正しく動いています。間違っていたのは、機器と機器をつなぐ順番の指示のほうでした。
無水総合試験では、水がない状態で起動から停止までのシーケンスを模擬信号で動かし、こうした「つなぎ方」の誤りを探します。
無水総合試験とは
無水総合試験は、水を通す前の段階で、発電機の起動から停止まで、停止から起動までの一連のシーケンスを確認する試験です。あわせて、故障で止まるときのシーケンスも確かめます。
単体試験では、機器を1台ずつ確認します。継電器は整定どおりに動作するか。弁は開閉するか。けれど、1台ずつ合格していても、つないだときに設計どおりの順番で動くとは限りません。機器どうしのつなぎ方と、動く順番を確かめるのが総合試験です。
保護連動試験との違い
よく似た名前の試験に、保護連動試験があります。2つは別の試験です。
| 保護連動試験 | 無水総合試験 | |
|---|---|---|
| 見る範囲 | 継電器が動作してから遮断器が開放するまでの経路 | 機械全体の起動から停止まで |
| 確かめること | トリップ信号が遮断器まで届くか | 各ステップが設計どおりの順番・条件で進むか |
| 主な対象 | 継電器・86・遮断器 | 弁・ガイドベーン・励磁・遮断器・ブレーキ・補機など |
保護連動試験については、保護連動試験とは|手順と86トリップ回路、現場で見つかる不具合にまとめています。
水がない状態で、どうやってシーケンスを進めるか
無水なので、水車は回りません。回らなければ回転は上がらず、電圧も立ち上がらず、シーケンスは途中で止まってしまいます。
そこで、本来なら水と回転が生み出す信号を、試験器で模擬して入力します。
| 模擬する信号 | 使うもの |
|---|---|
| 回転信号 | ファンクションジェネレータ |
| 水位・水圧 | CA500などで4-20mAを入力 |
| 発電機電圧 | 無ひずみ試験器 |
一方で、実際に動かせる機器は、本当に動かします。側路弁、入口弁、ガイドベーン、遮断器、ブレーキ、補機。模擬するのは「水がないと出てこない信号」だけで、機器そのものの動作はごまかしません。
水位・水圧の4-20mA入力に使うCA500については、CA500の記事で使い方をまとめています。
起動シーケンス
起動指令から並列まで、シーケンスはおおむね次の順番で進みます。
- 起動指令
- 補機の起動
- 側路弁 開 → 入口弁 開
- ガイドベーンが起動開度まで開き、回転が立ち上がる
- ガイドベーンが無負荷開度になり、回転が同期速度に達する
- 13(同期速度リレー)動作
- 初期励磁開始(31動作)
- 電圧が立ち上がり、84G動作
- 界磁遮断器41投入
- 31復帰、同期装置起動
- 並列
確認するのは、各ステップが整定どおりに動くかです。ガイドベーンは起動開度・無負荷開度の整定どおりに開くか。13は同期速度の整定で動作するか。84Gは電圧の整定で動作するか。模擬信号の値を上げていき、整定値のところで次のステップに進むことを確かめます。
並列から先の、同期投入のタイミング合わせは並列試験で行います。詳しくは発電機の並列試験|検相・空並列・実並列の手順と同期投入タイミングの調整をご覧ください。
停止シーケンス
通常の停止は、次の順番で進みます。
- 停止指令
- 4リレー復帰
- 負荷を下げる
- 無負荷を検出して発電機遮断器を開放、41開放
- ガイドベーン全閉
- 入口弁を閉じる
- 回転が下がり、14-1動作 → ブレーキ動作
- 14-2動作、完全停止を検出
- ブレーキ復帰、補機停止

起動と停止で、4・13・14・31・41・84Gと、たくさんの器具番号が出てきます。シーケンスを追うときは、この番号が「どの条件で動いて、次に何を動かすのか」を一つずつ押さえていくことになります。番号の意味は制御器具番号(デバイス番号)一覧にまとめています。なお、番号の使い方は設備によって違うことがあるので、最後は必ずその設備のシーケンス図で確認してください。
完全停止からブレーキ復帰までのように、決めた時間をおいて次へ進むところには、タイマーリレー(限時継電器)が入っていることがあります。タイマー単体の試験は、タイマーリレー(限時継電器)の試験方法にまとめています。
故障停止のシーケンス
故障で止まるときのシーケンスも、総合試験で確かめます。方法は、継電器を強制動作させて、停止区分どおりに動くかを見ることです。
| 区分 | どんなとき | 止まり方 |
|---|---|---|
| 86-1(非常停止) | 電気的な故障 | 遮断器を先に開放する |
| 86-2(急停止) | 機械的な故障 | 水を先に絞る |
| 86-R(停止後再起動) | 系統側の事故で解列したが、発電機自体は健全な場合 | 86-1に近い(電気事故のため)。停止後、条件が整えば自動で再起動する |
86-Rは、発電機が悪いわけではないので、止めたあとにもう一度起動します。条件が整えば自動で再起動する設備もあれば、遠隔で再起動をかける設備もあり、ここは設備によって違います。総合試験では、停止してから再起動するまでの一連のシーケンスを確認します。
停止区分の考え方は水車発電機の停止区分の記事で整理しています。
有水の故障停止試験との違い
無水総合試験で見るのは、区分どおりの順番で機器が動くかまでです。停止までに何秒かかるか、そのとき水圧や回転がどう振る舞うかは、水を通さなければ分かりません。そこは有水の故障停止試験で確かめます。詳しくは故障停止試験の記事にまとめています。
見つかった不具合:完全停止後に補機が止まらなかった
冒頭の話です。
停止シーケンスの確認で、完全停止まではすべて順調に進みました。14-2が動作し、完全停止を検出し、ブレーキが復帰する。ところが、最後に止まるはずの補機が止まりませんでした。
調べると、シーケンサーの回路に間違いがありました。その場で書き換えてもらい、補機が止まることを確認しました。
この不具合から言えることは2つあります。
ひとつは、最後のステップまで見届けることです。停止シーケンスでいちばん注目されるのは、遮断器の開放やガイドベーンの閉鎖、ブレーキの動作です。完全停止を検出したところで「終わった」と思いがちですが、シーケンスにはそのあとがあります。補機が止まるところまでが停止シーケンスです。
もうひとつは、この種類の間違いは単体試験では見つからないということです。補機そのものは、止める指令を出せば止まります。間違っていたのは「完全停止を検出したら補機を止める」という、つなぎの部分でした。シーケンスを最初から最後まで通して流して、はじめて表に出る不具合です。これが総合試験をやる理由そのものだと思っています。
まとめ
無水総合試験は、水を通す前に、起動から停止まで・停止から起動までのシーケンスを通しで確かめる試験です。
- 水と回転がないと出てこない信号は模擬する(回転=ファンクションジェネレータ、水位・水圧=CA500などで4-20mA、電圧=無ひずみ試験器)
- 実際に動かせる機器は本当に動かす
- 起動・停止とも、各ステップが整定どおりに進むかを確認する
- 故障停止は継電器を強制動作させ、86-1・86-2・86-Rの区分どおりに動くかを見る
- 最後のステップ(補機停止)まで見届ける
1台ずつ正しくても、つないだら動かないことがある。その「つなぎ」を水のないうちに確かめておくのが、この試験の役割です。
無水試験全体の流れは無水試験とは|水力発電所で水を通す前に行う試験の全体像と項目一覧をご覧ください。


コメント