絶縁抵抗計で測って問題なかったのに、なぜさらに高い電圧をかける試験が必要なのか。試験電圧をどう決めるのかも、条文を読んだだけでは分かりにくいところです。
2つの試験は、見ているものが違います。
内容は、新設工事でキュービクル母線と高圧ケーブルの耐電圧試験を担当したときのものです。
耐電圧試験とは何か
耐電圧試験は、規定の電圧を規定の時間だけ加えて、絶縁が破壊しないことを確認する試験です。絶縁耐力試験とも呼ばれます。
新しく設備を作ったとき、その電路が実際に使う電圧に耐えられるかを、使い始める前に確かめます。無水試験のなかでも、据付後の基礎確認にあたる段階で行います。
絶縁抵抗測定との違い
同じ絶縁を見る試験ですが、目的が違います。
| 絶縁抵抗測定 | 耐電圧試験 | |
|---|---|---|
| 何を見るか | いまどれだけ絶縁が保たれているか | 規定の電圧ストレスに耐えられるか |
| 加える電圧 | 500V、1000Vなど | 10,350Vなど(高圧回路の場合) |
| 結果 | MΩの数値 | 破壊しないかどうか |
| 目的 | 状態の把握 | 耐力の確認 |

絶縁抵抗測定は、いまの状態を数値で表します。値が高ければ、その時点では絶縁が保たれているということです。
しかし、絶縁抵抗が高くても、高い電圧をかけたときに耐えられるとは限りません。低い電圧では見えなかった弱点が、電圧を上げると現れることがあります。
逆に、耐電圧試験に合格しても、絶縁抵抗の値そのものは分かりません。破壊しなかったという事実が残るだけです。
目的が違うので、どちらか一方では代替できません。実務では両方を行い、耐電圧試験の前後で絶縁抵抗を測ります。
絶縁抵抗測定そのものの手順は別の記事にまとめています。
試験電圧の決め方
試験電圧は、電気設備技術基準の解釈で定められています。
最大使用電圧が7,000V以下の高圧電路では、最大使用電圧の1.5倍の交流電圧を10分間加えます。
公称電圧6,600Vの回路で計算すると、次のようになります。
- 最大使用電圧:6,900V
- 交流試験電圧:6,900V × 1.5 = 10,350V
ケーブルを直流で試験する場合は、交流試験電圧の2倍を加えます。
- 直流試験電圧:10,350V × 2 = 20,700V
なぜケーブルは直流で行うのか
私が担当した設備では、キュービクル母線は交流、高圧ケーブルは直流で試験しています。
理由は静電容量です。ケーブルは導体と遮へい層が長い距離で向かい合っているため、静電容量が大きくなります。交流で試験すると、この静電容量に応じた充電電流が流れ続けるため、試験装置に大きな容量が必要になります。
直流であれば、定常状態で充電電流は流れません。小さな容量の装置でも試験できます。ケーブルに直流を使うのは、この違いによるものです。
充電電流を実際にどう計算するかは、後述の「充電電流の求め方」でまとめています。
使用する試験装置
| 対象 | 試験 | 使用する装置 |
|---|---|---|
| キュービクル母線 | 交流 | 双興電機製作所の一体型試験機 |
| 高圧ケーブル | 直流 | ムサシインテック製 |
交流側は一体型の試験機を使っています。変圧器や計器を個別に組む方式に比べ、結線が少なく準備が早い点が利点です。
試験前の準備
切り離す機器
試験電圧をかける前に、外しておく機器があります。
避雷器(アレスタ)は切り離します。試験電圧で動作してしまい、正しい試験にならないためです。
計器用変圧器(VT)は、配電盤で縁切りプラグを挿入します。高い電圧が計器側へ回り込むことを防ぎます。
なお、VTについては工場での耐圧記録があれば、一次側のヒューズを外して試験を省略する場合もあります。これは客先と相談したうえで決めることです。現場の判断だけで省略できるものではありません。
試験前後の絶縁抵抗測定
耐電圧試験の前と後に、絶縁抵抗を測定します。
前に測るのは、試験を始める前の状態を記録するためです。後に測るのは、試験によって絶縁が損なわれていないかを確認するためです。
前後で値が大きく下がっていれば、破壊には至らなくても絶縁が傷んだ可能性があります。破壊しなかったという結果だけでは、この変化に気づけません。
試験容量の見積り
交流で試験する場合、対象の静電容量に応じた充電電流が流れます。この電流を試験装置が出せなければ、規定の電圧まで上げられません。
ここで冷やっとしたことがあります。
キュービクル母線を交流で試験したときのことです。試験装置の定格電流が75mAのところ、実際の試験電流が73mAでした。合格はしましたが、容量はぎりぎりでした。あと少し対象が大きければ、電圧が上がらず、装置を入れ替えて出直すことになっていたはずです。
試験前に対象の静電容量を測り、そこから充電電流を見積もったうえで装置を準備すればよかったと、いまは思います。
充電電流は静電容量と試験電圧、そして周波数で決まります。対象が大きいほど、試験電圧が高いほど、必要な電流は増えます。現場に着いてから足りないと気づいても、代わりの装置はすぐには手配できません。
充電電流の求め方
交流の耐電圧試験で流れる充電電流は、次の式で求められます。
Ic = 2πf C V
- Ic:充電電流(A)
- f:周波数(Hz)
- C:対象の静電容量(F)
- V:試験電圧(V)
実務で使う単位に直すと、この形が便利です。
Ic(mA)= 2πf × C(μF)× V(kV)
先ほどの73mAという値を、この式から逆算してみます。周波数は60Hz、試験電圧は10,350V(10.35kV)でした。
C = 73 ÷(2 × 3.14 × 60 × 10.35)≒ 0.019μF
あのとき対象の静電容量は、およそ0.019μFだったことになります。
逆に、事前にこの値を測っていれば、充電電流は計算で出せました。
Ic = 2 × 3.14 × 60 × 0.019 × 10.35 ≒ 74mA
定格75mAの装置に対しておよそ97%です。この数字を現場に行く前に知っていれば、余裕のある装置を用意したはずです。
試験装置に必要な容量も、電圧と電流から求められます。
P(kVA)= V(kV)× Ic(mA)÷ 1000
この例なら 10.35 × 73 ÷ 1000 ≒ 0.76kVA です。
なお、同じ対象でも50Hzの地域なら充電電流は61mAになります。周波数が変われば必要な電流も変わるため、装置を選ぶときは周波数もあわせて確認してください。
耐電圧試験のやり方(手順)
- 試験前の絶縁抵抗を測定する
- 切り離す機器を処理する(避雷器、計器用変圧器など)
- 区画と監視の体制を作る
- 試験装置を結線する
- 規定電圧の半分まで昇圧し、検電して電圧が印加されていることを確認する
- 規定の電圧まで昇圧する
- 充電電流を測定する(1分値・5分値・9分値を記録する)
- 10分経過後、速やかに降圧する
- 放電する
- 試験後の絶縁抵抗を測定する
半分の電圧まで昇圧した時点で、いったん検電します。装置は動いているのに実際には電圧がかかっていない、という状態を早い段階でつかむためです。ここで確認しておけば、規定電圧まで上げてから気づくよりも安全です。
充電電流は、規定電圧に達したあと1分値・5分値・9分値を読みます。3点あれば、時間とともに電流が増えていないかが分かります。1点だけの記録では、この変化が見えません。
10分が経過したら、速やかに降圧します。規定の時間を超えて電圧をかけ続ける必要はありません。
判定
閃絡や地絡がなければ合格です。規定の時間、規定の電圧に耐えたということになります。
あわせて充電電流を記録します。合否そのものは破壊の有無で決まりますが、電流の値は次回以降の比較材料になります。同じ設備で前回より大きく増えていれば、絶縁の状態が変化している可能性を疑えます。
試験中に電流が急に増えるような動きがあれば、絶縁が持ちこたえていない可能性があります。1分値・5分値・9分値を並べて見れば、この変化に気づけます。数値が安定していることも、合格と同じくらい大事な情報です。
試験前後の絶縁抵抗の値も、記録として残します。
安全対策
耐電圧試験は、日常の点検で扱う電圧とは桁が違います。ここは手順を省略できません。
区画をつくる。充電する機器の周りを赤ネットで囲みます。どこから先が危険なのかを、誰が見ても分かる形にします。
試験中であることを示す。電圧を印加している間は赤色灯を点灯させます。
監視者を複数配置する。試験中に異常がないかを見ます。ひとりでは、装置の操作をしながら周囲を見ることはできません。
試験後は必ず放電する。高圧ゴム手袋とゴム長靴を着用し、放電接地棒で放電します。電圧を切っただけでは、対象に電荷が残っています。
回路に触れる前に検電する。放電したつもりでも、検電して無電圧を確認してから触れます。
放電の手順を省いて残留電荷に触れれば、それだけで重大な事故になります。試験が終わって気が緩む場面ですが、ここが最も危険な瞬間だと考えています。

ほかの測定器をどう使い分けているかは、現場で使う電気計測器の使い分けにまとめています。
まとめ
耐電圧試験は、規定の電圧を規定の時間だけ加え、絶縁が破壊しないことを確認する試験です。
絶縁抵抗測定が「いまどれだけ絶縁が保たれているか」を測るのに対し、耐電圧試験は「規定の電圧ストレスに耐えられるか」を確かめます。目的が違うので、両方を行います。
試験電圧は、高圧電路であれば最大使用電圧の1.5倍を10分間。ケーブルを直流で行う場合は、その2倍です。
準備の段階では、避雷器と計器用変圧器の扱い、そして試験容量の見積りを忘れないでください。静電容量を測っておけば、装置が足りるかどうかは事前に分かります。
そして、区画・監視・放電。この3つは省略できません。
工程全体の位置づけは無水試験とはにまとめています。水を通す前に何を確かめておくのか、あわせて読んでいただくと流れが見えてきます。
本文で触れた計器用変圧器(VT)そのものの試験についてはCT・VTの試験方法にまとめました。


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