タイマーを試験用ソケットに差し、電源装置のスイッチを入れました。その直後、タイマーから煙が上がり、焦げ臭いにおいが広がりました。
直流で使うタイマーに、交流をかけていたのです。銘板を見れば防げた失敗でした。このときは予備品があったので、ことなきを得ました。
タイマーの試験は、つなぎ方も判定も単純です。そのぶん、定格電圧の確認のような準備で失敗しやすい試験です。この記事では、私が水力発電所の点検で行っているタイマーリレーの試験を、準備から報告書まで順に書きます。
タイマーリレー(限時継電器)とは
タイマーリレーは、電圧が入ってから、決めた時間がたったあとに接点を動かすリレーです。限時継電器とも呼びます。器具番号では「2」が限時継電器です。番号の意味は制御器具番号(デバイス番号)一覧にまとめています。
オンディレイとオフディレイ
よく使うのは、次の2種類です。
| 種類 | 動き方 | 測る時間 |
|---|---|---|
| オンディレイ | コイルに電圧が入ってから、設定時間後に接点が動く | 電圧を入れてから接点が動くまで |
| オフディレイ | コイルの電圧が切れてから、設定時間後に接点が戻る | 電圧を切ってから接点が戻るまで |
現場で多いのはオンディレイです。オフディレイは、測り始めのタイミングが「切った瞬間」になるので、つなぎ方に工夫が要ります。

水力発電所での使いどころ
水力発電所のシーケンスでは、誤動作を防ぐためにタイマーを入れることがあります。たとえば、次のような使い方です。
- 水車が完全に停止してから、数秒後にブレーキを解除する
- 油面リレーが動作してから、3秒後に警報やトリップを出す
一瞬の信号で警報や停止が出ないように、決めた時間続いたときだけ次へ進めるわけです。タイマーの時間が狂うと、シーケンス全体の動きが変わります。起動から停止までの流れは、無水総合試験で確認しています。
保護継電器と組み合わせて使う限時要素も、試験のやり方は同じです。
試験に使う道具
デジタル時間計(デンソクテクノ MCS-5100)
時間は、デンソクテクノのデジタル時間計、MCS-5100で測っています。スタートとストップの2つの信号の間の時間を測る測定器です。
- スタート:タイマーのコイルに電圧をかけた瞬間
- ストップ:限時接点が閉じた瞬間
接点の開閉でも、電圧の入り切りでも、スタートとストップを取れます。分解能は0.1msです。
ストップウォッチで測ると、押すタイミングで数百ミリ秒はずれます。時間計を使えば、接点が動いた瞬間で止まるので、人の反応のずれが入りません。
電源装置
タイマーに電圧をかけるのは、時間計ではなく別の電源装置です。タイマーの定格電圧に合わせて、直流と交流、電圧の大きさを選びます。
試験用ソケット
タイマーは盤のソケットから外し、試験用のソケットに差して試験します。端子に試験線をつなぎやすく、盤の回路に影響を与えずに済みます。
2接点以上あるタンブラスイッチ
オフディレイのような、電圧を切った瞬間から測るタイマーには、2接点以上あるタンブラスイッチを使います。
- 1つ目の接点で、電源装置からタイマーのコイルへの電圧を入り切りする
- 2つ目の接点を、時間計のスタート信号につなぐ
こうしておくと、スイッチを1回操作するだけで、タイマーへの電圧と時間計のスタートが同時に切り替わります。オフディレイなら、スイッチを「切」にした瞬間がスタートになります。

試験の前に確認すること
定格電圧を銘板とシーケンスで確かめる
冒頭の失敗は、ここを飛ばしたことが原因でした。タイマーの定格電圧は、本体の銘板とシーケンス図で確認します。
最近のタイマーは、電源電圧を選ばないもの(電圧フリー)が多くなりました。ただ、古いタイマーは定格が決まっています。DC24Vのタイマーに110Vをかけて壊す失敗は、現場でよく聞きます。
直流か交流か、電圧はいくつか。電源装置の出力を決める前に、必ず両方を確かめます。
直流なら、コイルの極性も確かめる
直流で使うタイマーは、コイルの端子に+と-が決まっているものがあります。逆につなぐと、タイマーが動作しなかったり、壊れたりすることがあります。
電源装置の+と-を、タイマーの接続図にある端子の+と-に合わせてつなぎます。試験用ソケットの端子番号と、タイマー側の端子番号の対応も、あわせて確認しておきます。
端子番号を接続図で確かめる
試験線をつなぐ前に、タイマーの接続図で端子番号を確かめます。どの端子が電源で、どの端子が限時接点なのかが分からないと、正しくつなげません。

図3は、オムロンのH3CR-A8(8ピン)の例です。電源は②と⑦で、直流のときは②が-、⑦が+になります。限時接点は2組あり、①と⑧が共通、③と⑥がa接点、④と⑤がb接点です。
この例なら、電源装置を②と⑦に、時間計のストップを①と③(または⑧と⑥)につなぎます。a接点は時間がたつと閉じるので、ストップを「閉じた瞬間」で取れます。
端子番号の割り当ては、形式によって違います。同じ8ピンでも、メーカーや型式が変われば、電源や接点の番号が変わることがあります。見た目が同じでも、必ずそのタイマーの接続図で確かめます。
外すタイマーのデバイスを確かめる
タイマーをソケットから外すときは、盤側の表示と、本体のデバイス(番号)が合っているかを確認します。似た形のタイマーが並んでいる盤では、ここで取り違えると、戻すときにも間違えます。
試験の手順
1. 整定目盛を確認して記録する
まず、タイマーの整定目盛がいくつになっているかを確認し、記録します。試験の判定は、この整定値と比べて行います。
2. 試験用ソケットにつなぐ
試験用ソケットにタイマーを差し、電源装置、タンブラスイッチ、時間計をつなぎます。電源装置の出力は、確認した定格電圧に合わせます。直流なら、コイルの+と-を間違えないようにつなぎます。
3. 電圧をかけて時間を測る
スイッチを入れて、時間計の表示を読みます。オフディレイなら、いったん電圧を入れたあと、スイッチを切って測ります。
測定は、1つのタイマーにつき1回です。
4. 判定する
測った時間を整定値と比べ、そのタイマーの許容誤差の範囲に入っていれば良とします。目安として、整定値の±10%がよく採用されます。整定5秒なら、4.5〜5.5秒の範囲です。
許容誤差は製品によって違うので、メーカーの仕様で確認します。
判定から外れたとき
時間がずれていたら調整する
タイマーは、目盛と実際の動作時間がずれてくることがあります。目盛は5秒なのに、実際は6秒で動く、というような状態です。
ずれていたときは、整定の時間で動作するように目盛を調整し、もう一度測ります。目盛と実測値が大きくずれている場合は、客先と相談して交換することもあります。
動作ランプが光るのに、接点が動かない
ある試験で、時間計の測定が止まらなかったことがありました。タイマーの動作ランプは光っているのに、接点が動いていなかったのです。
ランプだけを見ていたら、正常と判断していたかもしれません。時間計は接点が動いた瞬間で止まるので、接点が動かなければ測定は止まりません。
接点不良のタイマーは、調整では直りません。すぐに代わりのタイマーを探します。よく使う形式のタイマーは、予備を準備しておくと安心です。冒頭の失敗で助かったのも、予備品があったからでした。
盤に戻すとき
試験が終わったら、タイマーを盤のソケットに戻します。このとき、次の2つを確認します。
- 盤側の表示と、本体のデバイスが合っているか
- 整定目盛が、試験前の位置からずれていないか
試験用ソケットに差したり抜いたりするうちに、目盛のつまみに手が触れて動くことがあります。目盛に目印を付けておくと、ずれに気づきやすくなります。
報告書に書くこと
報告書には、次の項目を書いています。
- 整定値
- 測定値
- 型式などの仕様
- 定格電圧
定格電圧を書いておけば、次の点検で試験する人が電源装置の出力を決めるときに迷いません。
保護継電器の試験全体の考え方は、保護継電器試験とはにまとめています。現場で使っている測定器は、現場で使う電気計測器の使い分けで一覧にしています。
まとめ
- タイマーリレーは、決めた時間がたってから接点を動かすリレー。水力発電所では誤動作防止に使うことがある
- 時間はデジタル時間計で測る。スタートはコイルに電圧をかけた瞬間、ストップは限時接点が閉じた瞬間
- オフディレイは、2接点以上あるタンブラスイッチで、電圧の入り切りと時間計のスタートを同時に切り替える
- 試験の前に、定格電圧(直流か交流か、電圧の大きさ)を銘板とシーケンスで確かめる。直流ならコイルの極性も合わせる
- 判定は整定値と比べ、製品の許容誤差内なら良。目安は±10%
- 時間計が止まらないときは、接点不良を疑う
- 戻すときは、デバイスと整定目盛を確認する
タイマーの試験は、つないで測るだけの単純な試験です。ただ、定格電圧を一つ間違えるだけで、タイマーは煙を出して壊れます。電源装置のスイッチを入れる前に、銘板をもう一度見る。それだけで防げる失敗です。


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