先輩について継電器試験の現場に入ったものの、何をしているのか全体像が掴めない。そんな若手技術者に向けた記事です。保護継電器試験がなぜ必要か、試験が3つの型に分かれること、継電器ごとの試験項目、そして事故につながりやすい準備と安全手順までを、全体像として整理します。
保護継電器試験はなぜ必要か
この章でわかること:継電器試験が必要な理由と、点検の中での位置づけ。
保護継電器は、普段はまったく動きません。事故が起きたときにだけ動作する機器です。そのため、正常な状態を保っているかどうかを知る機会は、試験のときしかありません。
継電器の役割は、事故電流や異常電圧を検出して遮断器に指令を出すことです。設備を守る最後の砦にあたります。ここが働かなければ、機器の損傷が広がり、上位の系統まで停電が波及します。
一方で、失敗はもう一方向にもあります。平常時に誤動作すれば、必要のない停電を起こします。生産の停止や需要家への影響が直接発生します。動作しないことと、動作しすぎることは、どちらも同じ「保護の失敗」です。試験ではこの両方を確かめます。
継電器試験は、法令に基づく定期点検の一部として位置づけられています。日常の巡視では内部の特性まで分かりません。また、経年で特性がずれていく機器なので、一度合格したから安心という性質のものでもありません。定期的に試験電流や電圧を加えて、動作を実測する必要があります。
よくある失敗:外観に異常がないことをもって「問題なし」と判断することです。
試験は大きく3つの型に分かれる
この章でわかること:特性試験・連動試験・付帯確認の役割の違い。

1つ目は特性試験です。継電器が整定値どおりに動作するかを見ます。中心となるのは最小動作値と動作時間特性です。最小動作値は、どこから動き始めるかの境目を示します。動作時間特性は、加えた電流の大きさに応じて動作までの時間がどう変わるかを見る項目です。試験器から電流や電圧を加えて実測します。
2つ目は連動試験です。継電器の接点が閉じてから遮断器がトリップするまでの流れが成立するかを確認します。継電器が正しく動作しても、そこから遮断器のトリップコイルへ至る経路に断線や端子の緩みがあれば、遮断はできません。制御回路の配線や補助リレーまで含めて、経路を通して確かめる試験です。
3つ目は付帯確認です。外観、接点の状態、絶縁抵抗、端子の締付など、特性以外の部分を見ます。絶縁抵抗は継電器内部や制御回路の劣化を、端子の締付は緩みによる接触不良を見つけるための項目です。地味な作業ですが、ここで見つかる不具合は少なくありません。
大事なのは、特性試験に合格しても保護が機能するとは限らないことです。特性と連動は別に確認する必要があります。
継電器単体を見るものを単体試験、遮断器まで含めた流れを見るものを総合試験と呼び分けることもあります。単体試験で継電器そのものの性能を、総合試験で設備としての機能を確認する、という分担です。
私の現場は機械式のリレーが多く、接点の汚れで接点抵抗が高くなり動作しなかったことがあります。単体試験に合わせて接点抵抗を確認しておくことをおすすめします。ただ試験用のプラグが無い場合は接点の配線を外す必要があるため、戻し忘れには注意が必要です。
よくある失敗:特性試験の数値が出たことで満足し、連動試験を省くことです。
継電器の種類と試験項目の対応表
この章でわかること:主な継電器と、その試験項目の対応。
| 継電器 | 主な試験項目 |
|---|---|
| OCR(過電流継電器) | 最小動作電流、限時特性、瞬時要素 |
| GR(地絡継電器) | 動作電流、動作時間 |
| DGR(地絡方向継電器) | 動作電流、動作電圧、位相特性 |
| UVR(不足電圧継電器)/OVR(過電圧継電器) | 動作電圧、復帰値 |
OCRは過電流を検出します。限時特性は電流が大きいほど早く動作する特性、瞬時要素は大電流で時間をおかずに動作する要素です。この2つを分けて確認します。誘導形(円板形)OCRの具体的な試験手順は、誘導形OCRの試験手順|円板形過電流継電器の実践ガイドで解説しています。
GRは地絡電流を検出します。試験項目は動作電流と動作時間の2つで、比較的シンプルです。
DGRは電流だけでなく電圧と、両者の位相関係まで見ます。地絡の方向を判別する継電器なので、位相特性の確認が欠かせません。ここは扱いが難しいため、DGR試験の手順|GRとの違いと位相特性試験の読み方で詳しく解説しています。
UVRとOVRでは復帰値の確認が入ります。動作したあと、どこまで戻れば復帰するかを見る項目です。動作値だけ合っていても復帰しなければ、状態が元に戻りません。
発電機保護では、過電流や逆電力、周波数など、対象に応じて項目が増えます。単独の記事で扱う範囲になります。
なお、同じ名前の継電器でも、機械式とデジタル式では試験の進め方が変わります。機械式は可動部の状態が結果に表れるため、動作値だけでなく動きの滑らかさにも注意します。
整定値と判定値は継電器ごとに違います。表は何を測るかを示すもので、数値は整定表とメーカー資料で確認してください。
私は今までOCRからDGR、UVR、OVR、発電機保護まで一通り試験してきました。試験電源にはNF回路設計の無ひずみ試験機を使っています。はじめは使用方法が難しく慣れるまで苦労しました。使用方法については別記事で取り上げたいと思います。
よくある失敗:表の項目だけ埋めて、その継電器が何から設備を守っているのかを確認しないことです。
試験前に必ず押さえる準備と安全手順
この章でわかること:事故につながりやすい準備項目と、安全の要点。
事故の危険は試験そのものより準備の段階にあります。押さえる項目は次のとおりです。
- 停電範囲を確認し、関係者と需要家へ周知する
- CT(変流器)二次側を短絡する
- VT(計器用変圧器)二次側を切り離し、逆加電圧を防ぐ
- 試験端子・切離し端子を扱い、誤トリップを防ぐ
- 整定値を事前に記録する
CT二次側の扱いは特に重要です。CTは一次電流に比例した電流を二次側に流す機器で、二次側は短絡状態で使うことが前提になっています。開放したまま一次電流が流れると電流の逃げ道がなくなり、二次巻線に高い電圧が現れます。感電と機器損傷の両方につながります。
VTは逆方向の注意が必要です。二次側から誤って電圧を加えると、一次側に昇圧された電圧が現れます。これを逆加電圧と呼びます。試験の前に二次側を切り離しておきます。
試験端子や切離し端子は、継電器を回路から切り離して試験するために設けられています。扱う順序を誤ると、試験中の信号が実際の遮断器へ伝わり、誤トリップを起こします。
整定値は試験で変更することがあります。終わったら必ず元に戻します。戻し忘れは、保護設定を変えたまま設備を運転させることになり、影響が大きい失敗です。変更した項目と元の値を、その場で控えておくのが確実です。
作業は有資格者が行い、保護具を着用してください。
CT二次側の開放は経験していませんが、先輩から最も強く言われている項目です。整定値は試験前に記録し、戻したあとにダブルチェックする運用にしています。記録で一番確実なのは実際に写真で記録しておくことです。
よくある失敗:整定値を戻したつもりで、確認せずに現場を離れることです。
まとめ
この章でわかること:試験の意味の要約と、次に読むべき記事。
保護継電器試験は、継電器が動くことの確認であると同時に、保護協調の中で正しい順序で動くかを見る作業です。保護協調とは、事故点に最も近い継電器が先に動作し、上位はそれより遅れて動作する関係を指します。個々の継電器が合格していても、この順序が崩れていれば、必要のない範囲まで停電させます。
成績書はExcelで作り、前回値と比較しています。機械式のリレーは経年でずれるので、単発の数値より変化の方向が手がかりになります。
試験器を操作できることと、試験の意味がわかることは別です。ダイヤルを回す手順を覚えたら、次はその数値が何を守っているのかを考えてみてください。全体像が見えると、現場での指示の意味も変わって聞こえてきます。


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