水車発電機の停止区分|86-1・86-2・警報の違いと警報表示試験の進め方

水車発電機の停止区分と警報表示試験の記事のアイキャッチ画像。86-1は非常停止、86-2は急停止、そのほかに警報の区分があることを3つのアイコンで示し、右側に86-1停止・86-2停止・警報・運転中・正常が並ぶ警報表示盤を配置している。 水力発電所の試験

警報が出たときに発電機がどう止まるのか。86-1と86-2、どちらでトリップするのかを即答できるでしょうか。

電気の故障と機械の故障では、止める順序が逆になります。

後半では、無水試験で警報表示試験を180ケース流し、停止区分を一つずつ確かめたときに見つかった不具合も紹介します。

水車発電機の停止区分とは

水車発電機に異常が起きたとき、すべてを同じ手順で止めるわけではありません。故障の性質によって、止め方を変えています。

理由は単純です。電気的な故障は、一秒でも早く系統から切り離さないと被害が広がります。一方で機械的な故障は、先に水を絞らないと回転速度が跳ね上がります。守るべきものが違えば、動かす順序も変わります。

この止め方の違いを整理したものが停止区分です。現場では86-1、86-2といった番号で呼びます。86はANSIデバイス番号でロックアウト継電器を指し、その後ろの枝番で区分を分けています。ロックアウト継電器は、いったん動作すると手動で復帰させるまで状態を保持する継電器です。誤って再起動させないための仕組みでもあります。

区分呼称主な故障例発電機遮断器
86-1非常停止発電機の短絡、地絡ただちに開放
86-2急停止過速度、軸受温度異常無負荷を検出してから開放
―警報軽微な異常開放しない(表示のみ)

区分の番号を覚えるより先に、なぜその順序で止めるのかを押さえておくと、シーケンスを追うときに迷いません。

86-1(非常停止)|電気的故障のとき

86-1は電気的な故障に対する区分です。発電機の短絡、地絡、主変圧器の内部故障などが該当します。

動作の流れはこうです。継電器が故障を検出すると86-1が動作し、発電機遮断器をただちに開放します。系統から切り離したあと、デフレクタおよびニードルを閉じて水を止め、機械を停止させていきます。

遮断器を先に開放するのは、故障電流を流し続けないためです。短絡や地絡が起きている状態で系統につながったままでいると、巻線の焼損が進み、被害が発電機の外へ広がります。ここでは機械の都合よりも、電気的な切り離しが優先されます。

なお、この区分に入る故障を検出しているのが保護継電器です。地絡の検出についてはDGR試験の手順、過電流の検出については誘導形OCRの試験手順で、それぞれ試験の方法を解説しています。

86-2(急停止)|機械的故障のとき

86-2は機械的な故障に対する区分です。回転速度の超過(過速度)、軸受温度の異常、振動大などが該当します。

動作の流れは86-1と逆になります。故障を検出すると86-2が動作し、まずデフレクタを投入してニードルを閉じていきます。水を絞って出力が落ち、無負荷を検出してから発電機遮断器を開放します。この最後の部分は通常停止と同じ流れです。

ここが最も間違えやすい点なので、理由まで押さえてください。機械的な故障で先に遮断器を開けてしまうと、水が入ったまま発電機だけが系統から外れます。負荷が消えた状態で水が入っていれば、回転体は行き場を失って加速します。過速度を防ぐために止めようとしているのに、自分で過速度を作ることになります。だから機械的故障では、水を先に絞るのです。

ペルトン水車でデフレクタを使うのも同じ理由です。ニードルは急に閉じられません。水圧管路の水を急に止めれば水撃圧が発生し、管路や機器を傷めます。そこでニードルはゆっくり閉じ、その間の水はデフレクタでランナから逸らします。速さと安全を両立させるための組み合わせです。

86-1は電気、86-2は機械。遮断器を先に切るか、水を先に絞るか。 この一文で区別できれば、現場で迷うことはほとんどなくなります。

86-2では、遮断器が先に開くわけではありません。ここを思い込んでいると、シーケンスを追ったときに話が合わなくなります。

警報のみの区分と、そのほかの86

3つ目は、トリップせずに警報表示だけを行う区分です。運転を継続しながら対処すればよいレベルの異常が割り付けられます。すべての異常で機械を止めていては、供給に支障が出ます。止めるべきものと、知らせれば足りるものを分けているわけです。

枝番はこの3つだけではありません。私が担当している電気所では、86-R(非常停止後再始動)や86-3(無負荷有励磁)といった区分もあります。

注意したいのは、この割り付けが電気所ごとに違うことです。同じ「軸受温度高」でも、ある発電所では急停止、別の発電所では警報ということが実際にあります。教科書の分類をそのまま持ち込まず、その現場の運転フロー図や展開接続図で確認してください。

警報表示試験とは何を確認する試験か

警報表示試験は、無水試験の一工程として行います。無水試験は、水を通さない状態で制御回路や保護回路の動作を確認する試験です。

この試験で確認するのは、次の2点です。

  1. 末端の機器から制御盤のHMI(タッチパネル)まで、信号が正しく届くか
  2. その故障に対して、設計どおりの停止区分で動くか

1つ目は信号ルートの確認です。検出器から中継端子、PLC、HMIへと至る経路のどこかに断線や誤配線があれば、警報は表示されません。

2つ目のほうが重要です。表示が出ることと、正しい区分で止まることは別だからです。「表示は正しいが、停止区分が違う」という状態は、画面を見ているだけでは絶対に分かりません。両方を一緒に確認するのが、この試験の意味です。

条件作成の方法と現場のコツ

実際に故障が起きていない状態で警報を出すには、故障の条件を人工的に作ります。方法は主に2つです。

回路のジャンパー:接点が閉じた状態を模擬します。ヒューズ付きのクリップを使って、該当の端子間を短絡させます。

信号線のリフト:端子から線を外し、断線や接点が開いた状態を模擬します。b接点で構成された回路の確認に使います。

どちらを使うかは、その警報がa接点で出るのかb接点で出るのかによります。ここを判断するために、展開接続図(シーケンス図)を読みます。末端の検出器から出た線がどの端子を経由し、PLCのどの入力に入っているのかを追えば、どこをどう触れば条件が作れるかが見えてきます。

現場で気をつけている点を挙げます。

  • ヒューズ付きのクリップを使う:ただのクリップだと、当てる場所を誤ったときに電源を短絡させます。ヒューズが入っていれば、被害はヒューズ1本で済みます
  • 外した線には必ずタグを付ける:戻し忘れは、警報が出ない状態のまま設備を運転させることにつながります
  • 復旧はチェックリストで確認する:記憶に頼らず、外した順に書き出して、戻すたびに消していきます
  • 2人で声を出して確認する:条件を作る人と画面を見る人が分かれるため、思い込みによる判定ミスが起きやすい作業です

ケース数が多くなると、一つひとつの作業は単純でも、復旧漏れのリスクだけが積み上がっていきます。丁寧さより、仕組みで防ぐことを優先してください。

180ケースを流して見つかった不具合

先日担当した発電所では、警報表示試験のケース数が180ありました。1日中、展開接続図とにらめっこしながら条件を作り続ける作業です。

結果として、いくつかの不具合が見つかりました。内容はPLCの設定間違いで、停止区分が設計と異なっているものです。本来は急停止に割り付けられるべき故障が、警報の扱いになっていました。

この種の不具合は、図面のレビューでは見つかりません。設計図は正しく、実際に書き込まれたPLCのパラメータだけがずれているからです。表示は正常に出るので、信号ルートの確認だけで終わらせていれば見逃していました。

もしそのまま運用に入っていたら、実際にその故障が起きたときに機械は止まりません。試験でしか見つからない類の不具合というのは、こういうものを指します。180ケースを省かずに流す意味は、ここにあります。

やはり試験は大事だと、あらためて感じた現場でした。

ケース数が多くても、似た警報をまとめて省略はしません。今回の不具合も、省略していたら見つかりませんでした。

まとめ

水車発電機の停止区分は、故障の性質に応じて止め方を変える仕組みです。

  • 86-1(非常停止):電気的故障。発電機遮断器を先に開放してから、水を止める
  • 86-2(急停止):機械的故障。デフレクタとニードルで水を絞り、無負荷を検出してから遮断器を開放する
  • 警報:トリップせず、表示のみ

覚え方は「86-1は電気、86-2は機械。遮断器を先に切るか、水を先に絞るか」です。

そして、この割り付けが設計どおりになっているかを確かめるのが警報表示試験です。表示が出るかどうかではなく、正しい区分で動くかどうかを見る試験だと理解しておいてください。

停止指令を出す側である保護継電器については、保護継電器試験の基礎|なぜ行い、何を試験するのかで全体像を整理しています。あわせて読んでみてください。

負荷遮断試験の前には、故障停止試験を終わらせておきます。何かあったときに止められることを先に確認しておくためです。詳しくは負荷遮断試験とはにまとめました。

この停止区分が、実際に設計どおり動くかを有水で確かめるのが故障停止試験です。手順と記録の取り方は故障停止試験とはにまとめました。

電気ライオン

水力発電所で、電気設備の保守と現地試験を担当しています。経験は10年ほど。
継電器試験、無水・有水試験、測定器の使い方など、自分の手でやってきたことだけを書いています。
電験三種、第一種電気工事士、1級電気工事施工管理技士、消防設備士甲種第4類。

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